「膜系の治療」と腰が折れ曲がった急性腰痛患者
10日前に靴を履こうと前屈した時に、腰にピリッと痛みが走った30代の女性。
翌日から更に痛みが増して、歩行や寝返りにも支障が出るようになる。
整形外科医院でのX-Rayでは特別な異常がない。
「疲れでしょう」と言われて、鎮痛剤と湿布剤を処方され、「安静にするように」と指導された。
それで仕事も1週間の休みを取り、自宅で安静にしていたら何とか動けるようになった。

休養明けで出勤したが、どうも具合が悪い。
充分休んだのだから頑張らなければと働いていたが、3日目には腰が伸ばせなくなった。
堪らなくなり、昼休みに横になって休息を取ったら、今度は起き上がれなくなった。
やっとのことで立ちあがったら、腰が屈曲して腰が折れ曲がって伸ばせない状態になった。

これでは仕事も出来ないと、70度ほどに腰を屈めて手を大腿部に添え、やっと歩くようにして治療にみえた。

ともかく腰が伸びなければ治療テーブルで臥位になれない。腰部前屈位での姿勢であれば、座位でいることは可能のようだ。先ずは、座位で背部と腹部の浅筋膜の動きを調整して、ある程度は体幹の伸展を可能な状態にしなければならない。

今度は何とか、テーブル上で伏臥位に出来たが、左の腰背部の筋は過緊張で盛り上がり硬くなっている。胸郭膜も過緊張して胸郭の可動もみられない。

こうした患者さんは浅筋膜リリースが上手くいくと、深部の筋も弾性を取り戻してくる。
腰背部が緩み出したので、伏臥位のままで右の上肢を挙上させると左の鼡径部から大腿部に関連痛が起こる。左の上肢の挙上では問題が起こらない。

そこで胸郭膜と横隔膜をリリースした。今度は、左上肢の挙上も問題なく出来るようになった。胸郭が可動するようになると、更に背部全体の筋に柔軟性が出てきたので、体幹を20度まで伸展位にして腰仙部の筋膜リリースを行う。
浅筋膜は、背部と腹部、側部の左右の動きで逆のすべり運動が起こる。そこを注意深く、膜可動域を確認しながら進めるのがいい。やたら筋肉を刺激して怒らせてしまうと、どうにもならなくなる。

この患者さん、帰りは直立位で歩けるようになり、「あっ~、楽に動ける」ようになった。まだ「要治療」ではあるが、注意事項をしっかりと伝えて、在宅で出来るケアを指導した。

膜系についての基礎的な学びは、どうにも動かせないこうした症例でも役に立つ。
直接筋肉にアプローチしてしくじるよりは、軽い刺激で有効な効果が出せる。
膜系の学びには、久しく翻訳を待ち望んでいた「エンドレス・ウェブ」も恰好の教材である。
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皮膚や浅筋膜の運動のパターンを知るには「皮膚運動学」も役に立つ。
触診で動きが感じられれば対応できる。更に、浅筋膜の運動パターンを知っていれば、触診の手助けにもなる。
お勧めの参考書である。
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by m_chiro | 2011-02-12 18:35 | 膜の話 | Trackback | Comments(2)
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Commented by 神田博行 at 2011-02-14 09:24 x
baseではお世話になっております。新潟の神田です。
守屋先生のブログはいつも大変勉強になります。ありがとうございます。
以前から筋膜についての書籍を探しておりました。早速購入いたします。
これからもよろしくお願致します。
Commented by m_chiro at 2011-02-15 09:06
神田先生、こんにちは。
ご紹介した2冊の本は、参考になると思います。

こちらこそ、よろしくお願いします。
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