関連痛は謎だらけ⑤
⑤関連痛には記憶が反映されるのか?

アメリカの「Dynamic Chiropractic」(Vol24,Issue06)誌に掲載されたSeaman,DCの記事に、関連痛の実験を行った論文が引用されていた。
その引用論文は、1954年に発表されたFeinsteinの「深部体性組織からの関連痛に関する実験」である。

この実験では、被験者の棘間に高張性食塩水を注射したときの症状を記録している。
それによると、特定の関連痛パターンが生じたことが記録されているが、被験者の何人かは全く痛みが見られず、また一定の被験者には痛みの代わりに自律神経随伴症状に悩まされたと報告している。

どのような自律神経随伴症状かというと、蒼白、発汗、徐脈、血圧降下、失神や失神のような感覚、吐き気などであった。
棘間の深部組織への侵害刺激は、ほとんどの人で痛みにつながる。
それでも一定数の患者では、何らかの理由で内臓症状が優位に出ることがある。
そんな実験の論文である。

さて、先のSeaman,DCはFeinsteinの論文から何を言いたかったのかというと、棘間に与えられた高張性食塩水による侵害刺激感覚は痛み症状とイコールではないということにある。
したがって、この侵害刺激感覚が受容されて、局所痛、関連痛、内臓症状の経験に繋がるわけで、侵害受容感覚と痛みは区別しなければならないのである。

と言うことは、侵害刺激が必ず同じ症状を作るとも限らない。
それがどのような理由で関連痛になるのかは分からないのだ。

.故・横田敏勝(滋賀医科大学名誉教授)先生の著書には、脳に貯蔵された「痛みの記憶」が関連痛として引き出されることもあると書かれていた。
関連痛のパターンは1つの前提条件の実証に過ぎないと言うのである。

どうも、ある侵害刺激が局所痛であったり、関連痛であったり、しかも記憶に反映されたパターン通りではない関連痛もあり、自律神経症状を呈したり、稀には痛まなかったりで、どんな症状に振り分けるのかは謎である。

そう言えば「関連痛は謎だらけ①」での症例も、左下肢痛の既往歴を持っていた。
それも脳の記憶が少なからず反映しているのだろうか。



参考文献、引用文献
1)“Dynamic Chiropractic”Vol.29,No2.“Nociception Is Not a Symptom; Nociception Is Not Pain”By David Seaman, DC, MS, DABCN
http://www.dynamicchiropractic.com/mpacms/dc/article.php?id=51113
2)“Experiments on pain referred from deep somatic tissues”By B.Feinstein
http://www.ejbjs.org/cgi/reprint/36/5/981.pdf
3)横田敏勝著「痛みと脳」118頁
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by m_chiro | 2011-01-25 19:11 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
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