関連痛は謎だらけ②
②遅れて起こる関連痛の新たな仮説から

関連痛に関する仮説は「末梢説」と「中枢説」に大別され、19世紀後半から諸説が出始めた。
そのいずれもが遅れてやって来る関連痛の機序を説明しきれていない。

そんな中で。明治国際医療大学生理学ユニット・川喜田健司教授の論文「筋硬結の基礎最前線」に興味深い仮説が紹介されていた。
Peter E. Baldry の仮説である。

脊髄レベルでのニューロン・ネットワークにおける可塑的変化と新しい受容野の広がりについて、「眠れるシナプス」の結合という視点から仮説が構築されている。Ruchの「収束―投射説」を発展させたものである。

c0113928_17243940.jpg

              川喜田健司改図・「筋硬結の最前線」より転載

端折って分かりやすく説明すると、
例えば、小殿筋を支配する神経回路を「A」としよう。
この神経は脊髄の特定の二次ニューロンとシナプスしている。

そこに小殿筋に損傷が加わると、痛みの信号が「A」の回路を伝導する。
この「A」の回路は、「B」の回路と連絡がある。
「B」の回路を、遠隔筋であるハムストリング支配としておこう。
ところが「A」と「B」の結合は、形態学的な連絡があっても機能していない、言わば「眠れるシナプス」である。

眠れるシナプスは、損傷による化学反応によって機能し始める仕組みである。

また、「A」と結合した皮膚との神経回路「C」も「眠れるシナプス」である。
更に、遠隔筋であるハムストリングと、「A」の神経が収束する二次ニューロンとのシナプスする「新しい受容野」が作られる。これを「D」とする。

こうしたサイレントなシナプスからの脊髄レベルでの収束があり、更には新しい受容野の発現まで、ニュラル・ネットワークから関連痛の機序を明かしている。

新しい受容野の発現までは5分以上かかるとされている。
さて、ヒトでの遅延は10数秒単位とされていて、その時間差をどう解決するかが課題でもあるようだ。
サイレントなシナプスが機能する化学反応系も今一明らかではない。

この仮説の前提であるサイレントなシナプスが同定され、それを機能させる化学反応系が明確になる必要があるものの、遅れて起こる関連痛の理由が見えて来そうである。
受容器もシナプスも「サイレント」な組織の研究がトレンドなのだろうか。

さて、われわれが経験する関連痛の多くは更に遅延時間が長いように思える。
そうなると、神経学的な仮説とは違う機序を考える必要がありそうだ。

(続く)
[PR]
by m_chiro | 2011-01-13 17:28 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
トラックバックURL : http://mchiro.exblog.jp/tb/15760085
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
<< 関連痛は謎だらけ③ 関連痛のメカニズムは謎だらけ① >>



守屋カイロプラクティック・オフィスのブログです
外部リンク
カテゴリ
以前の記事
お気に入りブログ
最新のコメント
最新のトラックバック
ほとんどがMPSなんだけ..
from 心療整形外科
月経が再開した
from 心療整形外科
TPは痛みの現場ですらな..
from 反証的、鍼灸・手技・心理臨床
脊椎麻酔後頭痛について
from 反証的、鍼灸・手技・心理臨床
起立性頭痛
from 反証的、鍼灸・手技・心理臨床
「5%の中に本当の椎間板..
from 心療整形外科
髄液循環系と揺らしメモ
from 反証的、鍼灸・手技・心理臨床
医師はユニコーン(架空の..
from 心療整形外科
末梢神経の周膜と上膜にも..
from 反証的、鍼灸・手技・心理臨床
また勉強になりました。
from 漢のブログ
ライフログ
検索