「痛み学」NOTE37. 痛みの臨床的指標
「痛み学・NOTE」は、日々の臨床で痛みと向き合っている医師や日本を代表する研究者の著作あるいはホームページを通して学んだり考えたりしたことを、私の「学習ノート」としてまとめ、書き綴るものです。

37.痛みの臨床的指標

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上の図は、デルマトーム(dermatome)として発表された主なものである。
こうして見ると、デルマトームは必ずしも同じものが採用されているわけではないことが分かる。
デルマトームとは脊髄神経後根が支配する皮膚領域、つまり求心性の感覚神経の皮膚支配領域のことであるが、脊髄が形態的に分節構造を持っているわけではない。
したがって皮膚節の境界も曖昧なわけで、あくまでも機能的な分節が31対の脊髄神経支配で区分けしている。
当然のごとく、その境界に定説はない。極めて不確定である。

デルマトームに対して、遠心性の運動神経支配領域は筋分節(ミオトーム)と呼ばれている。
上のデルマトームの様々な図をみると、臨床上の印象としてはどうもkeegan&Garrettの図がより合致しているように思われるのだが、どうだろう。
デルマトームは、脊髄疾患がどの分節レベルにあるのか判断する上で有用である。
しかし、末梢に放散する痛みをデルマトームに照合しても、ピタリ合致するケースには先ずお目にかかれない。

内臓疾患では、その病巣部上の体壁において筋・筋膜が緊張あるいは皮膚の変化が見られるとされている。
つまり内臓疾患の関連痛はデルマトームに出現することが多いということであるが、筋肉からの関連痛はデルマトームに出現するわけではない。

臨床で有用性が高いのは、TP(トリガーポイント:Trigger Point)パターンの図である。
TPによって誘発される関連痛を示したもので、その専門の成書にも掲載されている。
またインターネット検索でも入手できる。このTPパターンの図は、関連痛の発信源を探る参考としてベッドサイドでも便利に利用できる。
それでも、こうした関連痛はマニュアルと合致しないことがあり、関連痛のメカニズムは未だ全容が明らかではない。

そもそもTPとは何か。
侵害受容器が発痛物質によって感作され過敏状態になった病態で、その過敏点が引き金となって様々な痛みや関連痛を引き起こすポイントである。
要するに、筋・筋膜由来の侵害受容性疼痛をもたらす痛み信号の発信源になっている。

この関連する痛みは筋・筋膜性疼痛症候群(Myofascial Pain Syndrome:MPS)として知られているが、通常は医科の診断名として使われることはない。
そもそもMPSという診断名自体が存在しないのだろう。
そんなわけで、MPSの病態は他の疾患名として診断されているのが実情のようだ。
例えば、椎間板ヘルニアによる頸部および腰部の神経根症、脊柱管狭窄症、変形性関節症などとされる痛み症状は、その典型であろう。
そこには、適切な治療が行われることがない、という実態も含んでいる。
不幸なことにMPSの病態は原因不明とされやすい。
あるいは、異常がないとされる。
または詐病や心因性、神経症と扱われやすい。
こうした患者さんが、慢性痛になり、痛みの難民患者となっている実情も看過できない問題なのである。

また、骨膜痛点パターンも見逃せない。
運動機能障害の患者さんには、よく診られる。
TPパターンと同様に骨膜痛点パターンも押さえて置くと便利に使える。
例えば、剣状突起や恥骨結合上縁の骨膜痛点は腹直筋の緊張に関わるし、大転子の骨膜痛点は股関節疾患や外転筋の緊張をもたらす。
また、T5,6棘突起の骨膜痛点は下頸部疾患や胸腰部疾患に関与することがあり、脊柱傍深筋の緊張はL5棘突起の骨膜痛点の影響を受けやすい。
こうした骨膜痛点の反射変化は30項目ほどある。
それでも、例として挙げた関連性からも分かるように、多くは解剖学的位置関係からその関連性を想定しやすいものが多いようである。
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by m_chiro | 2010-12-24 18:16 | 痛み学NOTE | Trackback | Comments(2)
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Commented by sukoyaka at 2010-12-31 21:54 x
ご指摘 悩む処です、古典的な皮膚分節が応用出来るように感じでます

筋分節でもなし 感覚分節でもなさそうで
敢えて名付ければ 皮膚筋膜分節?のような連鎖を想像しています エビデンスが見つからないので…不勉強ですが(悲)

最近の経験では慢性的に推移した五十肩の治療で可動性はホボ改善したのにしつこく残っていた上腕・三角筋後部周辺の違和感が患部とT2&3SP間のスラッグで改善出来ました

タマタマなのか?再現性が有るのか追いかけてみたいです

いつも重要な問題提起を頂き感謝しています
来年もよろしくお願い致します 良い年をお迎え下さい
Commented by m_chiro at 2011-01-01 09:25
馬場先生、昨年は本当にお引立ていただき感謝申し上げます。
今年もご指導のほどよろしくお願いいたします。

関連痛の機序には私も悩まされています。なぜ? が後を絶ちません。
>皮膚筋膜分節?のような連鎖。。。。
面白いですね。こうした仮説が浮かんでくること自体、体性からの関連痛の機序が見えてこないことの証で、また面白いことでもあるのでしょうか。
分節性にもかなりの幅があるようなので、それこそが生き物を扱う魅力のようにも思えます。
再現性の報告に期待しています。
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