アヴィセンナ「医学典範」と檜學(ひのき まなび)先生のこと①
10月末に開催された「日本カイロプラクティック・セミナー」で、学兄・馬場信年先生にお目にかかった折に「医学典範」という683頁に及ぶ大部の図書を手渡された。
中世のイスラム医学の聖典のような本で、全訳としては初めての監訳本のようである。 「医学史における系譜をたどる意味でも興味深いので、ぜひ読んで欲しい」と言われた。檜學先生他の共訳である。 檜學先生は、以前、研究会や学会等に招かれてのご講義を何度か拝聴し、多いに感銘を受けた先生である。コーヒーを飲みながら親しくお話を伺ったこともあった。島根医科大学の学長も務められた立派な先生で、平衡神経学の世界的な権威でもある。 檜學先生の著書にも多くの学びを頂いた。 最初に手にした著書は「めまいの科学―心と身体の平衡―」で、今の私の治療に多くの示唆を受けた。次に読んだのは「医学への夢―私の医学概論―」で、1958年(昭和33年)に岩手医科大学着任から1988年に島根医科大学の学長職に至るまでの30年間に書きためた論説をまとめた著書だった。 挿絵に令夫人の描かれた俳画が使われていて、そこに先生の句が寄せられている。 その令夫人も京大耳鼻咽喉科の教室で檜學先生と研究を共にされたご縁のようであるが、この本には御夫婦の医学に対する思いが詰まっているような著作だった。 とても好きな本で、いろいろと考えさせもした。 改めてその本を開いてみると、4章に「医学を支える思想」を論じていて、その中に「アラビア医学の現代的意味」と題した一文もあった。 平衡神経学にばかり気を取られて、医学の系譜という檜學先生の関連性の視点を、すっかり失念していたようだ。 科学はただ技術の開発に関与しておればよいというものではない。新しい技術の開発は有用性があるにはちがいないが、より重要なことはその技術の土台となる思想を創出することである。医学においてもこの原則は同じである。それ故、医学概論のカリキュラムが新しい医学教育の中でもつ役割の一つは、医学の思想とその思想によって拓かれた技術の是非を見る眼を養い、学習することにある。そして、そのような医学概論でなければ新しい医学教育の中で命脈を保つことは困難であろう。(「序章 21世紀の医学に向けて」より とても深みを感じる言葉であるが、このような視点で「医学典範」を読み進めて行くうちに、カイロプラクティックの考え方の源流を覗いたように思えてならなかった。 D.D.パーマーがアヴィセンナの「医学典範」に学んだかどうかは知る由もないが、「医学典範」の底を流れる思想は明らかにカイロプラクティックの生命観や自然観に受け継がれているのだろう。
by m_chiro
| 2010-11-11 00:26
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