「鬼平」から中枢性感作を読み解くと….こんな感じだろうか?
鬼平に夢中になって読んでいる時に、ふと閃いた。
盗人の所業を、あの中枢性感作の舞台に当てはめると、同じような仕組みになりそうだ。それも急ぎ働きの外道の所業に似ている。
盗人の不分律は「犯さず、殺さず、余剰金以外は盗まず」だが、外道の盗人はこの法を徹底的に無視する。

熊澤孝朗先生の著作に出てくる下の図は、痛覚過敏のメカニズムを示している。
以前、「神経因性疼痛の機序と舞台」http://mchiro.exblog.jp/tb/12025920の記事にしたものを、「鬼平」の盗人の所業から読み解いてみた。
c0113928_15564174.jpg

後角の神経細胞に痛覚神経終末がシナプスしている。
この神経細胞は、差し詰め「お宝」が納めてある大店という舞台である。
舞台と登場人物を次のように設定してみよう。

標的の大店(脊髄の神経細胞)
蔵(NMDA受容体)
難攻不落の錠前(Mgイオン)
盗賊のお頭(グルタミン酸)
盗賊の手下(サブスタンスP)
引き込み役の進入口(非NMDA受容体)
大店の入り口(NK1受容体)
錠前破りの名人(PKC)
つなぎ;伝令係(G蛋白)
お宝(プロスタグランジン、NO;痛み物質)
お宝の担ぎ役(Caイオン)
外道働き(c-fos:前初期遺伝子)
大川(脊髄)
腕利きの船頭(グリア細胞)
火盗改方(オピオイド:μ受容体)


さて、外道働きの凶賊は、お宝の眠る大店(神経細胞)に狙いを付ける。
引き込み役に女中奉公などを住み込ませて、押仕込みの手はずを整える
お宝が眠る蔵(NMDA受容体)には、頑丈な錠前(Mg)がついている。
ちょっとやそっとでは開かない。

引き込み役は裏口の閂(非NMDA受容体)を開けて、狂賊の手下(サブスタンスP)を招き入れる。
狂賊のお頭一派(グルタミン酸)は、大店の前で舞台が整うのを待ちながら外回りを見張っている。
母屋の入り口(NK1受容体)が開かれ、ここから狂賊の手下の第2部隊(サブスタンスP)が侵入する。

腕利きの錠前破り(PKC)が蔵の錠前(Mg)を外す。
お頭(グルタミン酸)が、ドッと蔵(NMDA受容体)に押し入る。
お宝の担ぎ役(Caイオン)がやってきて、どんどんお宝(プロスタグランジン、NO:最強の痛み物質)を運び出す。

「つなぎ役(G蛋白)」が徹底すした伝令役を果たす。
お宝(NO)は「cGMP(環状グアノリン酸)」を活性させ、更にPKC(プロテインキナーゼC)を強力にする。言ってみれば、盗人の欲を煽るモチベーションのようなものだろうか。
盗み尽くせ!、1人も生かしておくな!、と徹底したお頭の伝令が走る。

結果的に、前初期遺伝子(c-fos)が発現し、さまざまなカスケード反応を続けて細胞の反応を変化させる。C-fosは、他の遺伝子を活性化させる転写因子として働いていて、細胞反応の変化が続けられてしまう。まったく「鬼平」の外道働きのようだ。

さて、根こそぎ持ちだしたお宝を運び出すのがまた一苦労である。
何しろ、街道筋は火盗改めに押さえられている。大川も、船着き場には密偵たちが張り付いている。腕利きの船頭を確保して、大川の藪筋から舟を出し、夜陰に乗じて大川を下り海に出てアジト(脳)に向かわなければならない。

腕利きの船頭は、グリア細胞だ。
これまで脊髄のグリア細胞は支持組織とされてきたが、最近の研究で痛みの可塑性などに重要な働きをしていることが分かってきた。
活性化ミクログリアから産生される過剰量のNOは,神経変性過程でみられる神経障害の重要なメディエーターと考えられているようである。

無理矢理ではあるが、ちょっとは分かりやすくなったかな?

ところで、ここで疑問に思うのは「鬼平」の出番がないことだ。
神経細胞には「オピオイド受容体」があるのだから、オピオイド(火盗改め)で封じ込めそうなものだが、オピオイドが効くとは限らないのはなぜだろう?
(続きは、またあとで)
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by m_chiro | 2010-11-02 16:09 | 痛み考 | Trackback | Comments(8)
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Commented by sansetu at 2010-11-02 19:56
守屋先生、これですっ。
漫画、よく分かる生理学シリーズ第一弾。
「よく分かる鬼平犯科帳、痛みの生理学」。
出版しましょう。
それが売れたら時代劇版鬼平生理学DVDも。
Commented by bancyou1965 at 2010-11-02 21:12
第二章楽しみです。物語にすると凄くよくイメージできます。
Commented by シャルル at 2010-11-03 12:00 x
うふふ。なんだか、おもしろくなってきましたね。
Commented by 科学新聞社 斎藤 信次 at 2010-11-03 15:11 x
前回の「今年ハマった~」を読んで、30年来の池波ファンとして、あまりの嬉しさにコメントさせていただこうかな、と思っているうちに、ジャーナルやら何やらで遅れ遅れになり、それらがクリアされてやっとブログを覗いたら、今回はさらに嬉しくなるような鬼平ネタ、恐れ入りました!
今度、ケリーのセミナーでお会いするときは、空き時間にとことん鬼平の話をさせてください!
Commented by m_chiro at 2010-11-03 16:19
sansetu先生、「時代劇版鬼平生理学DVD]ですか、笑えますね。。。。

新春時代劇スペシャル「死闘! 鬼平と可塑性のお頭」なんてのは、どうですか?。。。。
「可塑性のお頭」役はsansetu先生に、あっしはその手下の「サブスタンスP」の役をやらしていただきやしょう!。。。。
bancyou先生には「錠前破り」を、syarurukさんには「密偵おまさ」を。さて、鬼平は誰に?。。。、神保先生にでも頼もうかな!

なんか、お笑いコントになりそう!
Commented by m_chiro at 2010-11-03 16:20
bancyou先生、熊澤先生にインタビューした時の、「サイエンスだからわかりやすく」という言葉には揺さぶられました。
私も愉しんでサイエンスを学びたいと思うのですが、なかなか「分かりやすく」が難しい、と実感させられます。
Commented by m_chiro at 2010-11-03 16:20
シャルルさん、おもしろいですかね?
無理矢理のトンチンカンではないですか?
Commented by m_chiro at 2010-11-03 16:21
社長も鬼平のフアンでしたか。
今度、鬼平蘊蓄が聞けるのが楽しみになりました。
又、お世話になります。
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