横粂議員(民主党)の「カイロ国家資格化」発言に思う ② カイロの独自性とは何か?
② カイロの独自性とは何か?
カイロ界で使われる「サブラクセーション」の同義語が100を下らない。 M. Gattermanが自著である「カイロプラクティック・サブラクセーション」に、その同義語の一覧表を表示している。 この原著 ”Faoundations of Chiropractic Subluxation” は、カナディアン・メモリアル・カイロプラクティック・カレッジでの「サブラクセーションの再検討」(1992年)という学会がきっかけとなって著述された。 サブラクセーションに関するカイロプラクティックの教科書である。 サブラクセーションに科学の篩(ふるい)をかけようとする、まともな考えを持つ指導的立場の人たちも少なからず居るのである。 にもかかわらず、「サブラクセーション」というカイロの基本的な概念に対するコンセンサスは未だに得られていないのは何故なんだろう。 対話と議論の不足も大きな理由のひとつかもしれない。 どうも、この業界は議論を通じて同意を得て行く作業が苦手なのだろうか、と思えるふしがある。 なぜ正攻法の手順が疎かになるのだろう? その疑問がカイロの原理の中に見え隠れする。 カイロプラクティックの基本原理は3つに集約されている。 「1.哲学、2.科学、3.アート」の3つである。 とかく「原理」というやつは厄介で、とらわれ過ぎると原理主義の罠にはまる。 カイロプラクティックの哲学は壮大な自然観でもある。 ヒトの内部世界(小宇宙)は「イネイト・インテリジェンス」によって、外部世界(大宇宙)は「ユニバーサル・インテリジェンス」によって秩序と調和がもたらされている、と説く。 こうした自然観は、決してカイロプラクティックのオリジナルではないが、その小宇宙たる人間を統一するものを「イネイト・インテリジェンス」としている。 これは「先天的叡智」と訳される概念があるが、先天的にヒトが持つ「治癒力」と言うべきものだろう。あるいは「恒常性」と言ってもよい。 つまり、「病い」は「イネイト」が治すのであり、「サブラクセーション」の存在はその「イネイト」の働きを阻害すると考えられている。 だから、サブラクセーションをアジャストすることは「イネイト」を十全に働かせるためであり、単なる分節レベルの障害とは看做さない。この「哲学」と「科学」の関係は、カイロプラクティックの原理を構成する独自な考え方で、「哲学」と「科学」を結びつけ完結させるものが「アート」である。 これらの原理が問題を厄介にしているようにみえる。 サブラクセーションをアジャストして、後はイネイトの働きに委ねるわけだから、事細かにサブラクセーションを明らかにする意義をあまり感じていない。 メジャー・サブラクセーションを見つけることが重要で、そこにアジャストメントを行い、イネイトを賦活させるところにカイロプラクティックのアートがあるとされる。 だからこそ、哲学派のカイロプラクターにとっては、サブラクセーションを分節レベルで解明してもカイロプラクティックの科学には成り得ないのだろう。 「サブラクセーション」と「イネイト」の関係性こそが重要で、そこに独自性が強調されるところでもある。カイロの科学派と哲学派の確執が今でも続いている理由が、この辺にあるように思えてならない。 そもそも「カイロプラクティック哲学」などというものは存在しないのであり、「イネイト」の概念も「ホメオスターシス」に集約されるものであろう。 それでも、カイロプラクティックの哲学的概念が、サブラクセーションの科学的発展の隠れ蓑にされてきたのである。 サブラクセーションを分節レベルだけで解明していくと、カイロのオリジナリティは薄められてしまいかねない。 関節障害に対するオステオパシーとの違いも不明瞭になる。 整形外科領域では、そこに徒手療法を用いるコメディカルとの違いも明らかにしなければいけない。 こうした生気論的な考え方を根源にもつカイロプラクティックを、すんなりと医科学に組み込むほど甘くはないのである。 こうした問題解決の糸口が、カイロプラクティック神経学の発展にあるように思えるのだが、この領域は緒に就いたばかりである。 カイロプラクティックの科学性も独自性も、自ら明確にする必要性も残されているのである。
by m_chiro
| 2010-10-20 23:24
| カイロプラクティック
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