横粂議員(民主党)の「カイロ国家資格化」発言に思う
① 不思議の国の「サブラクセーション」
民主党の1年生議員である横粂氏がカイロプラクティックの国家資格化に取り組む意向だという。 横粂議員は自身のブログに、『「脱ガラパゴス」の立場から、カイロプラクティックの国家資格化に取り組んでいきます。』(http://ameblo.jp/katsuhito-yokokume/entry-10665151686.html)と書いている。 何をどう思慮したものか、あるいは誰に煽られたのか知らないが、寝ぼけたことを言うものだ。 ガラパゴスとは、「日本国内で独自の進化を遂げながら、海外では採用・利用されない商品のこと」を象徴するらしい。 カイロプラクティックが、日本国内でどんな独自の進化を遂げたと言うのだろう。 あるいは逆に考えて、海外のカイロプラクティックが医学的に何のエビデンスを示している、と言うのだろう。はなはだ疑問である。 法制化には、必ず「科学性・独自性・独立性」が問われる。 国家資格化を叫ぶならば、先ずは、カイロプラクティックとは何をする治療なのか、を質さなければならない。 カイロプラクティックが最も得意とする治療法は、身体の関節、特に脊柱の関節のアジャストメントだと長い間主張されてきた。どんな関節病変に対するアジャストメントかと言えば、それは「サブラクセーション」と言うことになる。 では、サブラクセーションとは何か、これが肝心の問題である。 カイロの先進国・アメリカのカイロプラクティック団体(ACA)が、いろいろな概念的変遷を経て1972年に定義したサブラクセーションとは以下の通りである。 「サブラクセーションとは、隣接関節構造における正常な動力学的、解剖学的あるいは生理学的な関係の変調である;A Sabluxation is the alteration of the normal dynamics, anatomical or physiological relationships of contiguous articular structures.」 これ、どんな病変か理解できますか? 隣接関節構造であるから、椎間板も筋・筋膜や靭帯も神経・血管・リンパ組織も含めた関節を構成する複合体のことである。 そして解剖学的に正常な状態からの変調とは、レントゲン写真で確認できる病態を指すのだろう。 レントゲンで確認できなくても、つまり明らかな解剖学的な変調が見られなくても、動力学的に正常な状態からの変調も含むのである。 それはどうやって確認するのかと言えば、検者の可動触診で決められる。 つまり正常な関節可動に動力学的な変調があるとする感覚である。 個人の感覚であるから、必ずしもその感覚は術者に共通のものとは限らない。 変調があると感じる検者にはサブラクセーションが存在するが、感じない検者には存在しない、とも言える。 更に、生理学的に正常な状態からの変調もサブラクセーションに含まれる。 極端な話、そこに腫瘍があっても生理学的な変調であるし、感染などによってそこに発熱があっても生理学的な変調と言える。 そうなるとサブラクセーションとは、まるで不思議の国の「打ち出の小槌」のようにどんな病態にも適応できる。 そもそも正常な状態とはどんな状態を指すのだろうか? 先ずは正常の状態を定義する必要がありそうだ。 この定義を作ったACAという組織は学術団体ではない。カイロプラクティックの政治団体である。 だからカイロプラクティックの業務を拡大するためなら、あるいはカイロプラクターの利権を守るためなら、こんなご都合主義の定義を臆面もなく主張する。 したがってカイロプラクターにとっては、とても有り難く便利な概念ともなるだろう。 そこからどんなテクニックも導き出せる。だからこそカイロプラクティックのテクニックは、まるで玉手箱のようにあらゆる方法がある。 その上に、世界のカイロプラクターがサブラクセーションの同義語とし著述している用語が100を下らないのである。 ここに至ると、「サブラクセーション」は不思議の国の話になる。 不思議の国の話は、医科学の領域には馴染めない。 それでも、政治的に強引に線引きをしようという意見なら、今の日本の医療行政には問題が山積している。政治家としてやるべき優先順位が違うのでは?、と思わざるを得ない。 一方、日本のカイロ業界は、足元を固める作業を自浄努力として先んずるべきである。
by m_chiro
| 2010-10-19 01:10
| カイロプラクティック
|
外部リンク
カテゴリ
全体
守屋カイロ・オフィス カイロプラクティック 痛み学NOTE 痛み考 症例 Books BASE論考 膜系連鎖 動態学 雑記 庄内の記 学術記事 わん・にゃん物語 膜の話 センタリングの技法 「神経学」覚書 ホメオダイナミクス MPS 解剖実習 エピジェネティクス」 「自律神経」覚書 治療の力学 分子栄養学 未分類 以前の記事
2023年 08月
2023年 05月 2023年 01月 2022年 11月 2022年 10月 2022年 09月 2022年 08月 2022年 01月 2021年 07月 2021年 06月 more... お気に入りブログ
最新のトラックバック
ライフログ
検索
タグ
その他のジャンル
|
||||||||||||||||||||||||||||
ファン申請 |
||