カイロもどき病
40代女性の気の毒な患者さんがみえた。

3年前にムチ打ち症になって以来、肩こりや頸の張り感が頻繁にあって、カイロ整体で治療を受けていたようである。
カイロ整体とはカイロプラクティックなのか、整体なのか、よく分からないがマニピュレーションを行う治療のようである。
マニピュレーションとは「キャビテーションを含む関節操作」である。
分かりやすく言えば、ボキ、ボキと関節のクリック音が生じる操作のことだ。

この患者さん、頸の関節をボキ、ボキされると気持ちがよくなったので、そんな治療を続けていたところ、首のチョッとした動きでもクリック音が出るようになった。
そのうちに動悸がするようになり、吐き気を伴う頭痛が起こるようにった。
首や頭が熱を帯びたようになり、体温を計ると37度を僅かに超えることも多くなってきた。医療機関を受診すると、更年期症状だの、自律神経症状だのとされた。
心療内科では「パニック障害」と診断された。
顎関節も開口に伴ってクリック音がするようになって、口腔外科でテンプレートも作った。
頭痛も頻発するので脳外科でCTを撮ったが、異常は見つからない。
症状は悪化するばかりで、何とも気の毒な話である。

関節の可動触診をすると、頸椎の関節が過剰な動き(ハイパーモビリティ)になってしまっている。
ボキボキと必要以上のマニピュレーションを反復してやり過ぎると、関節や筋の固有受容器がイレギュラーに反応するようになる。結果、この女性のような症状に悩まされことは十分にあり得る。ムチ打ち症を毎度反復させているようなものだ。

過度なマニピュレーションによってハイパー・モビリティが人為的に作られることを、業界では「医原病」に倣って「カイロ病」と呼んでいた。
しかし、回数も部位も見境なくマニピュレーションを行うのは、カイロプラクティックの原則とは異なる。
これを「カイロ病」と呼んでは、正統にカイロ治療をしている人にとって心外だろう。
したがって、これを「もどき病」とでも呼ぶことにする。
いずれにしても過度のマニピュレーションによって人為的に作られたものだろう。

これを安定させるのは、実は、とても厄介でもある。
この患者さんは、逆に頭蓋と上部肋骨に固着した動きがあり、頸椎だけが不安定になっている。とりあえずは反射系をモニターにして体幹の軸を安定させる手法を使いながら、固着部や脳脊髄硬膜のリズム運動を回復させてみた。

治療を終えて、気分は悪くならないか、と訊ねたところ「右眼が開いたようだ」と言う。
どうも右の眼瞼が垂れ下がっているような感覚もあったらしい。顔の右半分が痺れた感じがすることもよくあるようだ。顔色が随分良くなっていた。
それでも、事務職だからPCの使用などで下を向いての仕事になり、また悪化することにもなりかねない。
気の毒である。
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by m_chiro | 2010-10-12 22:06 | 症例 | Trackback | Comments(0)
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