「オレのとは違うなぁ~!」
横山秀夫の作品「臨場」のTVドラマも終わってしまった。
主人公の倉石は検視官で、殺人事件の現場で初動捜査に当たる警察ドラマだった。
終盤で殺人事件の推理を刑事あるいはスタッフの検視官が確信的に解説していると、主人公の倉石は「オレのとは違うなぁ~!」と言いだす。
この一言で、得意げに推論する刑事の表情が一変し、倉石の推論は事件の核心へと向かうのであるが、毎度「オレのとは違うなぁ~!」の場面になると、なぜか、観ている方もニンマリさせられてしまう。

話は変わるが、以前、業界のセミナーに出た時に、ある参加者が休憩時間に話しかけてきた。
「痛みの治療をしているんですか?」って。

逆に、「先生は痛みを治療しないの?」と聞き返すと、彼はこう言った。
「別に、僕は対症療法をしているわけではないですから…」。
この先の言い分は、おおよそ推測できる。
私の頭の中で、先の「臨場」の倉石の言葉がグルグル回りした。
「オレのとは違うなぁ~!」である。

我々の「治療の最終目的」は、痛みを止めることにあるのではない。
最終目的は、患者さんが「活き活きと生きる」ためのお手伝いをすることにある。
難しく言えば「患者さんのQOLを高めるお手伝い」である。少なくとも私は、そう思う。だから、痛みを止めることが最終目的ではない。慢性痛症の患者さんには、特にその意識が大切だと思う。

「痛み」は、その目的をさまたげる眼前にある最大の壁である。これを何とかしなければ前には進めない。だから、最優先して痛みの治療に当たらなければならないのだと思っている。

痛みを止めることが目的であれば、薬物の即効性にはかなわないだろう。それでも最強の鎮痛薬オピオイドをもってしても止めることのできない痛みもある。だから、薬物が万能というわけでもない。
でも素手と頭で勝負しても、どうにもならない痛みもある。そんなケースでは躊躇なく信頼している医師に紹介もする。
患者さん自身のためにも、先ずは痛みを止めることを「最優先すべきだ」と思うからである。このことは痛みの生理学における鉄則ともされている。
いたずらに長引かせると、難治性のややこしい痛みになるからだ。

筋骨格系の痛みには、運動分析や整形学テストなどを使って病態を把握する。これは痛みの再現性をみることで、憎悪因子と寛解因子を見つけることにある。もちろん障害部位をある程度特定することも可能だし、自分の守備範囲の痛みかを分ける判断にもなる。

寛解因子が見つかると、徒手治療もかなり即効的な効果を発揮できる。
どんなに調べても寛解因子のない痛みには、取り敢えず薬物の力を借りた方が早い。結果、その先の道筋も見えやすくなる。
痛みを止めることがゴールではないが、ゴールに向かうためには眼前の障碍を最優先で取り除かなければならないのだ。
目的と手段を勘違いしてはいけない、と自分に戒めている。

だから、チーと「オレのとは違うなぁ~」と思ってしまう。
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by m_chiro | 2010-07-04 12:05 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
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