「痛みを考える」・カイロ学会のキャンペーン
科学新聞社が発行する新聞「カイロジャーナル」の最新号(第68号)が届いた。
今年、福岡市で開催される「日本カイロプラクティック徒手医学会」・第12回学術大会(9月4,5日)のキャンペーン記事が見開きで組まれている。

この12回学会は「痛みを考える」をメインテーマにしている。
一昨年の10回学会は「ケアの本質」がメインテーマだった。
その学術大会のワーク・ショップで、私も「痛みのケアを考える」と題して話をさせていただき、根性痛とされる痛みに疑問を投げかけたのだった。

そのことが一つのきっかけとなり、今年の学会の実行委員会は九州のメンバーで構成されて、メインテーマも「痛み考える」とした。
カイロ業界にも、「痛みを深く掘り下げ、認識を新たにする機会にしよう」という思いからである。
当初、熊澤孝朗先生(愛知医科大学教学監、名古屋大学名誉教授)をお招きすべく準備を進めていたが、熊澤先生の諸事情と折り合わず断念せざるを得なくなった経緯がある。

ついでに私も実行委員会のメンバーに数えられ、その最初の仕事が「カイロジャーナル」でのキャンペーン記事への協力であった。
熊澤先生のインタビュー(詳細は「日本カイロプラクティック徒手医学会」のWebサイトhttp://www.jsccnet.org/にまもなく掲載される予定である)と、熊澤先生から伺った話の記事を書くことだった。

熊澤先生のお話を聞いて、強く印象に残ったこと。
一言で言えば「痛みの治療は、痛みを知ることから始まる」である。
また、熊澤先生はコメディカルの領域に期待しておられたことも印象深い。

熊澤先生から伺った話の要点を記事にしたわけだが、その拙文の一部を次に紹介したい。

慢性痛症は末梢に傷が無くても、傷が治っていても痛い。神経系が歪んで、可塑的に変容した「病気としての痛み」で、痛覚受容器が興奮して発症する正常の痛みとは全く違っている。こうして、近年になって発症機序が全く異なる2種類の痛みの存在が解明されたことによって、「痛み学」は大きく発展することとなった。
「神経損傷モデル」には変な症状が付き纏うのであるが、慢性痛症の多くの患者さんたちは実際に長い時代を「心因性や詐病」とされてきた。医療は、わけの分からない痛み症状を、そこに押し込んできたのである。こうした事態は、痛みの研究を停滞させかねないものがある。慢性痛症の病態には医者も無力で、あげくに手術で取ろうとしても、そうはいかない。膨大な無駄な医療費も随分と使われてきた。この医者が投げ出した痛みに、コメディカルの領域が果たす役割は大きい。新しい痛みの概念を知った上で、あらゆる鎮痛系を幅広く使って、患者さんに対応することができる領域なのである。
本来、痛みは警報である。緊急事態だからこそ許される身体反応があり、痛みが長引けば身体全体の不調を導く。防御姿勢をとり、防御そのものが痛みを作る。痛みにはこういう反応が必ず伴ってくる。椎間板ヘルニアが関与するとされてきた痛みも同様で、こういう防御のために起こす痛みというのも厄介である。
慢性痛症の治療は、痛みを知ることから始まるのである。患者さんが自分の痛みの実態を知ることで、かなりの患者さんが痛みから逃れられる。次に、その痛みを真っ当に慢性痛症として治療してもらう。症状は、神経系の可塑性ゆえに全てに関連してくる。可塑性がどこに痛みを作るかは予想できない。したがって、その治療にあたってはいろんなフィールドからみて対処することが必要で、今求められているのは「学際的アプローチ」である。


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by m_chiro | 2010-07-01 23:19 | 痛み考 | Trackback(1) | Comments(4)
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Tracked from 心療整形外科 at 2010-07-02 22:01
タイトル : 痛みの治療は、痛みを知ることから始まる」
「痛みを考える」・カイロ学会のキャンペーン... more
Commented by bancyou1965 at 2010-07-02 08:53
m_chiroお疲れさまでした。

>慢性痛症の治療は、痛みを知ることから始まるのである。
なるほどです。

その反面、多くの方が興味ないようにも思えてしまいます。
今までの長い痛みに関しての考え方は、そう簡単に変わらないのかもしれませんが、コツコツやっていきたいとおもいます。
Commented by m_chiro at 2010-07-02 23:09
bancyou先生、私もコツコツやっていきたいと思っています。
痛みの概念の変化は、今始まったばかりで、浸透するまでにはまだまだ時間もかかるのでしょうね。
痛みの治療に携わる人たちが、前に進めないといけないのでしょう。
ホントにコツコツですね。
Commented by シャルル at 2010-07-09 10:39 x
日に何度も痛いところが変わるので、慢性痛症であると実感できます。
歩いているときに急に足が痛くなっても、「ここで痛みを避けるように歩くと、長引くし、他のところが痛くなる」と自分に言い聞かせて普通に歩き続けます。足の痛みはしばらくすると消えます。
他の症状に置き換わるか、仕事などで痛みを忘れるか・・・。

慢性痛でも一箇所だけ痛い人は、そこの部分が悪いとしか思えないかもしれないですけれど。
Commented by m_chiro at 2010-07-09 23:36
慢性痛症は、これまで知られていた慢性痛とは全く違った概念なんですね。
生理的な痛みの機序では理解できない症状で、まるでパンドラの箱が開いたみたいにどんな症状が起きても不思議なことではないようです。
シャルルさんの体調をブログで知るにつけ、大変だなぁ~、と思います。
思うだけで、共有できるものではないわけですが。。。。。
痛みは完全に消えることがなくても、「日常の生活を活き活きと過ごせるように!」と心から願っています。
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