「ターヘル・アナトミア」は俗称だった
前回記事にした「桜を求めて角館へ③青柳家と「解体新書」に、メールで情報をいただいた。
その中に、次のURLを参考に紹介してくれた。
九州大学附属図書館企画展「東西の古医書に見られる身体」-九州大学の資料から-」
ページの下から3番目の図書のこと。

九州大学医学部と青柳家にあるのは「トーマス・バルトリン・アナトミア」のようである。
青柳家で撮った展示本の写真を見直すと、確かに「トーマス・バルトリン・アナトミア」と表示されている。
小田野直武の挿絵で「解体新書」の原画となったのは、この「トーマス・バルトリン・アナトミア」だった。

そこでもう一度、「解体新書」の原本について調べてみた。
すると、どうも「ターヘル・アナトミア」なる書名の図書は存在しないようである。
どこで混乱したのだろう?

杉田玄白が「蘭学事始」に「ターヘル・アナトミア」と書いた底本は、実際には「クルムスの解剖学書」のようである。
この本はドイツ人のクルムス(1689-1745年)が書いた解剖書で、1732年に出された第2版が数ヶ国語に翻訳されている。
その中にオランダ語訳があり、書名が「Ontleedkundige Tafelen(1734年)」である。
この本を杉田玄白が訳したことになる。書名を「ターヘル・アナトミア」とフリガナしているらしい。「Ontleedkundige Tafelen」はどう読んでも「ターヘル・アナトミア」にはならないが、杉田玄白はそう表記していたのだろう。
こうして「ターヘル・アナトミア」が俗称として流布したようだ。

「解体新書」は基本的には、玄白が「ターヘル・アナトミア」と呼んだ「クルムス解剖書」のオランダ語訳であるが、他にも数冊の洋書が参考にされて「実用的な解剖学書として再構成された本」ということのようである。

『解体新書』は一般に『ターヘル・アナトミア』の翻訳書と言われているが、それ以外にも『トンミュス解体書』『ブランカール解体書』『カスパル解体書』『コイテル解体書』『アンブル外科書解体篇』『ヘスリンキース解体書』『パルヘイン解体書』『バルシトス解体書』『ミスケル解体書』などが参考にされており、表紙は『ワルエルダ解剖書』から採られている。また和漢の説も引かれている。
(ウイキペディア「解体新書」より)


「解体新書」の挿絵もいろいろな解剖書を参考にしたのでしょう。
その挿絵の原本とした一冊「トーマス・バルトリンアナトミア」が、九大図書館と青柳家に展示されている、というわけです。
c0113928_22485612.jpg

これは角館・青柳家に展示されている小田野直武の描いた「解体新書」の表紙。

c0113928_23223483.jpg

左の写真は小田野直武が描いた挿絵の原画で、アダムとイブを現した「ワルエルダ解剖書」の扉絵である。

結局、「解体新書」の翻訳文も誤訳が多いと後に改訂されている。

今でこそ解剖書はどれにしようか迷うくらいあるが、最初に解剖書を制作しようとした人たちの苦労は大変なものがあったようである。





参考文献:ウイキペディア「ターヘル・アナトミア」、「解体新書」
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by m_chiro | 2010-05-09 23:08 | 雑記 | Trackback | Comments(0)
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