電話機の呼び出し音が鳴っているかどうかは、画像撮影してもわからない
椎間板ヘルニアが発見されたのは1934年だそうだ。
この1934年頃を境に、腰痛治療に外科手術が多用される時代に入ったのだろう。

それ以前はと言えば、乱暴に一括りすると、腰痛は「損傷」とみなされていた。
つまり事故や外傷に起因する疾患である。

それが社会保障制度の完備に従い、腰痛も労災の補償の対象になっていく。
ここに至って腰痛は疾患から労災になり、「休息と安静」が大切な対応だ、ということになる。
ところが、休養と安静を拠りどころにしていても、一向に腰痛はなくならない。逆に、右肩上がりに増加している。

そこへ、画像診断が重要な検査として登場してくると、画像検査は痛みの患者にも必須の検査になった。当然のごとく病理的な所見に注目が集まる。椎間板ヘルニアもそのひとつだ。
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「腰痛の発症動機」
(山口義臣ほか:整形外科MOOK,1979より。左が男性。右が女性)



腰痛などの動機は明らかでない。ほとんどは損傷とは無縁の動機である。
だから画像で病理的な所見が明らかになると、それが原因と思うことも、手術で腰の痛みも治るという発想も無理からぬことではあろう。

痛み症状だけで手術が行われるということは先ずないだろが、画像に病理的異常所見が見つかると手術の選択肢が検討される。
手術によって痛みから解放された人もいるだろうが、それでも手術で痛みが治るとは限らない。
最近では、椎間板ヘルニアで手術を選択することも激減したのだそうである。代わりに脊柱管狭窄症の手術例が増加した。

こうした手術の目的は、神経の圧迫を除去することにある。
したがって、極めて高い確率で目的は達成される。にもかかわらず、痛みが消えない人もあれば、あるいは手術前とは違った痛みに悩まされることになる人も出てくる。よくなる人もいる。

手術は構造的問題を解消することにある。たとえ構造的・病理的問題が手術で解決されても、実際は、痛みが消えることまでは予測できないのである。

よく考えてみれば当たり前のことである。
例えば、電話機の発信音が鳴っているとしよう。
痛みも電気信号なのだから、身体の中で発信音が鳴っているようなものだ。
電話機の発信音がなっているかどうかは、実際は、電話機をいくら画像に撮っても分からない。
画像で分かるのは電話機の(身体の)構造だけで、着信音(痛み)の有無ではないからである。

「椎間板ヘルニアによる痛み」の手術例が少なくなったように、やがて「脊柱管狭窄症による痛み」の手術例も行われなくなる時代が来るのでは?
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by m_chiro | 2010-04-01 22:47 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
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