痛みの歴史① アイスマンと痛みの痕跡
① アイスマンと痛みの痕跡

おそらく、痛みはヒトの歴史と共にはじまったことだろう。
それを裏付ける最古の資料は鍼術の痕跡である。
推定BC5000年頃とされる土中からは、古代の鍼が発見されている。
また、BC3300年頃のミイラからは経絡や経穴と思われる入れ墨が見つかった。
この脱水処理をされていないウェット・ミイラは、1991年にオーストリアとイタリア国境のチロリアン・アルプス山中の氷河から発見された。新石器時代の凍結ミイラである。

背中や足に15か所ほどの簡単な入れ墨があり、これらは現代の鍼灸術に使われる「つぼ」の位置にほぼ同じだと1998年にScience誌が報告した。
鍼治療は中国発祥(BC1000年頃)の歴史よりも遥か昔であった可能性を窺わせるもので、人類間の文化的接触が広範囲に及んでいた可能性が推測されているのである。
もしかしたら、鍼治療の起源を変える発見なのかもしれない。

さて、このチロリアン・アイスマンと呼ばれる凍結ミイラは、アルプスのエッツタール渓谷(海抜約3200m)で発見された。
その地名に因んで「エッツィ(Ozi)」と名づけられている。
ところがイタリアは「ヒベルナトゥス」と再命名している。国境で見つかったために、その所有を巡って命名まで変更された。現在はイタリアの南チロル考古学博物館(Museo Archeologico dell'Alto Adige)に所蔵されている。

このアイスマンの体型は小柄で推定159cm、体重40kg、年齢も46歳とされ、関節炎の痕跡や骨折根と思われる部位が数か所あったことがCT画像から判明した。
死因は左肩に突き刺さった矢であろうとされている。
また、興味深いことに皮膚の一部に刺青のような単純な幾何学模様が描かれていた。
これらはファッション性とは無縁の部位にあることから、鍼灸専門家による調査結果から経絡の一部ではないかとの味方が有力である。
刺青痕にある19か所のポイントが、経絡図のツボと5mm以内の範囲で9個所が合致したことも経絡説を後押ししている。

これらは膀胱経のツボに重なり、中には崑崙穴(BL60)も含まれていた。
そうなると、鍼灸の起源も古代中国から古代ヨーロッパへと変更せざるを得ないことになるが、関節炎や骨折痕など痛みとその対策に苦心したであろう医術の起源と生活史の足跡に思いが至る。
他にも、BC4500年前のものとされるアメリカ・インディアンの遺骨からは、関節リュウマチ痕も見つかっている。いずれも原始人にみられる痛みの痕跡である。
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by m_chiro | 2010-03-01 19:16 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
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