動くべきか!、寝込むべきか?
整形外科の「運動器の十年」キャンペーンの影響だろうか、「ロコモティブ・シンドローム」に因んだキャンペーンが市町村の健康イベントに登場するようになった。
「メタボ・シンドローム」と並んで市民の関心を高める狙いがあるのだろう。
「運動を行って骨と関節を丈夫にしよう!」というキャッチコピーで案内される。
運動器というのは骨、関節、筋肉、神経などの総称であるが、なぜか「骨と関節」にばかり注目を集めている。

「ロコモティブ・シンドローム」と言っても、結局は運動不足の解消を狙って運動教室、体操教室を行っているわけだが、個々人の状態を把握せずに一律に運動が勧められている。
その結果、あちこちの痛みを訴える人が治療に見えたりする。
仲間内がいると競争意識が働くのか、痛かろうが歯を喰いしばって無理をする。
負けてはならずと競り合いにもなる。
TVで教えていた運動法を、お茶の間で真似て具合が悪くなった、と言ってみえる人もいる。
そうなると、もっと動くべきか、寝込むべきか、それが問題になる。

普段、運動と無縁の人が、一気に始めると思わぬ落とし穴にはまる。
まあ、急にはじめるわけだから、あちこち筋痛が起きても不思議ではないが、中には深刻な痛みが続く人が出たりもする。

1990年代半ば頃からだろうか、アメリカのカイロプラクターが「Dysaffarentation;求心性入力不全」なる概念を言い出した。「Dysaffarentation」をステッドマン医学大辞典で調べても出ていないので、誰かが考え出した造語かもしれない。
簡略して要点を言えば、「侵害刺激の求心性入力の増大」と「圧・動き入力の減少」によるコンビネーションが痛みを作り出しやすい、と言うことになろうか。

筋・筋膜組織や関節などの靭帯組織に微損傷が生じると痛みが起こる。
それは侵害受容器からの信号が求心性に入力が増大している状態である。
動けば痛い。だから安静位を保って、出来るだけ動かないようになる。
この状態は「圧・動き求心性入力」の減少である。
結果、筋・筋膜組織の柔軟性が減少し、モーター・ユニットの関節部は不動化する。
こうなると不随意の筋収縮が起こるようになり、トリガーポイントや筋スパズムの発生を増長することになる。

逆のことも言える。加齢や組織損傷の結果として筋・筋膜や靭帯などの組織が柔軟性を失い、そのために関節が不動化して不随意の筋収縮の温床となる。
結果、痛みが出て和痛位で過ごすようになり、痛みの悪循環がはじまる。
そうなったら圧・動き刺激入力を増大させればいいわけだが、肝心なことは侵害刺激入力を抑えて動きを与えることだと言う話だ。

寝込むことは決していいことはない。そうかと言って、やみくもに動かせばいいと言うものでもない。
ぎっくり腰の患者さんを無理に動かせば、とんでもないことになるのは目に見えている。
そこで、侵害刺激の入力をいかに抑えて、圧・動き刺激を作り出すか、それこそが鍵となる。
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by m_chiro | 2009-12-01 21:59 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
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