ぎっくり腰の婦人の「頭」をみる
初老の婦人がぎっくり腰になったと言ってみえた。
座っていてふと振り向いたときに電気が走ったようにギクッときたようである。
ぎっくり腰になると次第に動けなくなってしまうが、今はまだ車の運転ができるので早めに対処しておきたい、という意向である。

触診すると、左の腰方形筋の緊張度が低下している。
前屈位が最も苦痛のようで、お辞儀程度にしか前屈できない。
胸郭や仙腸関節も固着していて可動性が感じられない。

痛みの患者さんをみるときに、特に頭蓋のリズムに注目するようにしている。
中脳の中心灰白質や延髄の青班核などは、下行性鎮痛系の鍵とみられているからだ。
こうした痛みを抑制するメカニズムは、脳が内因性のモルヒネ様物質を出して興奮している痛覚信号を抑えるので、大事なヒトの鎮痛系になっている。

頭蓋療法では鎮痛系にかかわる中脳水道~第三脳室が、リズム運動によって脳脊髄液を産出・循環させている、としている。
そういう視点に立てば、頭蓋の動きが鎮痛機序と深くかかわっているのだろう、との思いがあるからである。

大脳半球を分け、小脳を分けている硬膜系は、そのまま脊髄を包みこんで仙骨に及び、その中を流れる脳脊髄液の液体力学をコントロールしているとされている。
それだけでなく、身体全体の本質的な動きにも影響しているのだろう。

この婦人の頭蓋に触れた途端に、まるで無機質の物体にでも触れているような質感で、リズム運動が感じられなかった。
同調するように呼吸運動も浅い。
全身的にリズミカルな生体の動きが感じられないのである。

頭蓋治療を続けながら「最近、何か変わったことはありませんでした?」と尋ねると、「この間、友人が亡くなりまして随分ショックでした。ここのところ夜もあまり眠れない状態だ」と言う。
精神的な問題やストレス、緊張、睡眠不足や痛みを抱えた人には、頭のリズム運動が不足していたり、イレギュラーなリズムが感じられるのは、あながち無関係な身体兆候ではなさそうである。

頭蓋のリズム運動が回復すると、身体の弾性が出てきて自然な呼吸のリズムが戻ってきた。
腹部の筋膜をリリースし、背部から骨盤の膜系にもアプローチしたが、直接的に膜をストレッチするような直接的な手法は避けた。
ぎっくり腰は動きを改善することが重要だが、直接的に動かそうと働きかける手法は逆にマイナス効果となることが多い。だから、極力そうした直接的なアプローチを避けている。

治療後は背筋が伸びたように軽やかな動きがつくれるようになった。
緊張度の低下した左の腰方形筋の微損傷の回復には時間が必要だろう。
生活の中での注意事項を指摘して、日常の動きを行うことが大切である。決して寝込まないことだ。

「頭」が作り出している身体のリズムは、そのハードの機能系に深くかかわっているのだろう。
「頭」と言っても、決して脳のソフトとしての悪さや病理の問題をさすものではない。
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by m_chiro | 2009-11-20 00:37 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
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