「痛み学・NOTE」30. 交感神経の活動に依存する慢性痛の機序
「痛み学・NOTE」は、日々の臨床で痛みと向き合っている医師や日本を代表する研究者の著作あるいはホームページを通して学んだり考えたりしたことを、私の「学習ノート」としてまとめ、書き綴るものです。

30. 感神経の活動に依存する慢性痛の機序

慢性痛症は、侵害刺激によらずに痛みが憎悪する厄介な病態である。
例えば、気圧の変化、気温の変化などは侵害刺激ではない。
ところが、こうした自然現象によって痛み信号が発火しやすくなるということが分かっている。

こうした気候と痛みの研究は、名古屋大学環境医学研究所が力を入れている分野のようだ。
佐藤純・准教授が、交感神経に依存する慢性疼痛の機序に対する仮説(「慢性痛と交感神経系」)を論じているので、図を引用して紹介しておきたい。

c0113928_16293072.jpg


これらの仮説の要点は、次の2点にある。

①低気圧によって内耳の気圧受容器が興奮すると自律神経系とリンクして交感神経が緊張する。
②気温の低下によって皮膚および中枢における冷受容器が興奮すると自律神経系とリンクする。

ところが、このリンクがどのような機序で作動するかについては、今一つ曖昧なところである。
慢性痛のラットモデルでの実験では、交感神経を除去すると疼痛増強は起こらない、という結果がその根拠とされている。

一方、気温低下による痛みは、交感神経を除去しても消失しない。
どうも、気温低下による痛みの増強に交感神経の活動は、必ずしも重要な要因にはなっていないようである。
と言うことは、皮膚温の低下は、直接的に冷感受容線維を感作させることによって痛みが増強するルートが存在するのだろう。
気圧による痛みの増強には交感神経が重要な役割を果たし、気温の低下には皮膚の冷却による受容線維の興奮が鍵になっているようである。
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by m_chiro | 2009-10-01 16:30 | 痛み学NOTE | Trackback | Comments(3)
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Commented by sansetu at 2009-10-09 20:37
このあたりの機序は複雑で、まだまだとても解明されているとは言えませんね。
特に自律神経の症状としての反応の「出方」はやっかいですね。
井穴刺絡では低気圧に対しては副交感神経亢進状態と観て、副交感神経を鎮める処置をすることで実際に効果を上げています。
ただし気圧に関連すると思われる疼痛や症状を単純に片方の自律神経だけのせいにするのは、たぶん違うのではないかと臨床を行なっていて感じます。
Commented by sansetu at 2009-10-09 20:37
つづき
私は陰陽論の構造と同じなのではないかと強く感じるのですが、ただ自律神経は解剖学的に両神経が別個に存在していますね。なので線引きを明確にしたくなる気持ちも分かります。
ただ自律神経というのは、あるストレス刺激を受けたら、常に同一の神経だけが反応し続けるというものではないと思います。実際の患者さんを観ていると、しょっちゅうスイッチが入れ替わっているように見えます。たとえば最初は交感神経が興奮しても、それを鎮静させようとして二次的に強く副交感神経が異常興奮するような場合も考えられます。すると結果的には、たとえば低気圧に対して先に交感神経が興奮し、直後にそれを抑えるために副交感神経が病的に興奮する人もいるだろうということです。
それとか喘息発作を止めるのに鍼をするとよく止まるのですが、自分でやっていて、いったい今自分が入力した刺激はどちらの自律神経に対して作用したのか線引きできないことの方が多いのです。
たとえ井穴刺絡でH5F5を刺激したからといって、それをただちに副交感神経の抑制であると単純に線引きできるものではないのではないか、というのが最近の私の感想です。
Commented by m_chiro at 2009-10-10 22:31 x
sansetu先生、とても示唆に富んだご意見をいただき有難うございます。
確かに、自律神経は線引きできるほど単純ではなさそうです。
交感神経系は基本的に身体の統合的支配を行っていますから、実際に交感神経優位に働いているわけですが、その不随意の反応にも生存にかかわる重要度の高い組織へと作用が配分されているのでしょう。そのエネルギーの維持と回復に副交感神経が局所的に関わって対応する。だから、ご指摘のようにきちんと線引きできないシステムのように私も思います。

>結果的には、たとえば低気圧に対して先に交感神経が興奮し、直後にそれを抑えるために副交感神経が病的に興奮する人もいるだろうということです。

したがって、こういうことも起こり得ているわけですね。

この論文の著者は、慢性痛という前提で痛みの発症機序について書かれているわけですが、気圧や気温という侵害刺激でないものを、身体がどう取り込んでいるのかという機序については明確とは言えないように思います。
いろいろ悩まされます。それを知ることを楽しんで生きているような感じもありますが...。
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