「痛み学・NOTE」29. 神経因性疼痛の基本的な仮定
「痛み学・NOTE」は、日々の臨床で痛みと向き合っている医師や日本を代表する研究者の著作あるいはホームページを通して学んだり考えたりしたことを、私の「学習ノート」としてまとめ、書き綴るものです。

29. 神経因性疼痛の基本的な仮定

神経因性疼痛の機序について、未だその詳細な真実は藪の中にあるようだ。
私たちが知り得るものは仮説とその証拠に過ぎない。ここでは定説的な概念を紹介しよう。

神経因性疼痛を最初に発表したのは神経科医・ミッシェル(S.Weir.Mitchel;米国)だった。
ミッシェル医師は、南北戦争時代にフィラデルフィアで病院を開いていた。
そこで、南北戦争で負った末梢神経外傷の患者さんを、数百万人も診察治療している(1871)。

その内の10%の患者さんは、外傷を負った神経分布領域に激しい灼熱痛を訴えていた。
この時代に経験した症例から、基本的には2つの観察結果が私たちの神経因性疼痛の核心的な理解になっている。

1つは、末梢神経の部分的損傷は完全損傷よりも痛みを起こす可能性がより高いということ。
2つ目は、患者は鋭敏な過敏症をみせるということ。

これらの痛みを起こした病変は、末梢神経の部分的な損傷が関与していたことが報告されている。
私たちが痛みの機序を考えるときに、「痛みの悪循環説」でも触れたように仮定する経路はよく知られた痛み経路である。
末梢の刺激にはじまった痛覚刺激は、脊髄に入って反対側の脊髄視床路に渡り、視床に伝達されて皮質に広がる。

神経因性疼痛の基本的な仮定は、この経路に沿ったどこかの活動を増幅させる、あるいは末梢の侵害受容器に極めて異常な活動がある、と仮定することである。
この仮定は最も単純である。

もうひとつは、中枢神経系における下行性疼痛抑制系のルートで、何らかの抑制のポイントを阻むことによって痛覚伝導ニューロンを解放することになる。
当然、痛みの信号は発信され続け、神経自体が痛みのジェネレーターとなる。

また、末梢神経、特に有髄線維の損傷はその線維に形質的変化を起こし、通常は痛みを起こさないはずの有髄線維そのものが、痛みを送信し続けることになる。
そして脊髄に配線の取替えが起る。これは振動や触刺激の感覚が灼熱痛を引起すことにもなりかねない。
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by m_chiro | 2009-10-01 16:24 | 痛み学NOTE | Trackback(1) | Comments(2)
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Tracked from 漢(男)のブログ at 2009-10-04 07:38
タイトル : 消去法
「痛み学・NOTE」28. 神経因性疼痛の基本的な仮定 トラバさせていただいた守屋先生の痛み考は、我々のような徒手治療家には大変ありがたい記事で、科学新聞社のカイロジャーナルにも連載されている秀筆である。 いくら素晴らしい徒手治療家であっても、脊椎専門医の臨床経験と比べれば、その数はたかだかしれているのは事実でしょう。 しかし、こうして記事にしていただくと色んな矛盾点が見えてくる。 まず、ヘルニアや脊柱管狭窄症で起こるとされる腰下肢痛は、神経因性疼痛と言う扱いになるのだろう。 ... more
Commented by syaruruk at 2009-10-02 19:22
CRPSでも、線維筋痛症でも、アロディニアはあるようですね。
線維筋痛症も、神経の配線に問題があるのでしょうか。痛みで爪が切れなくて、10センチ以上も伸びている映像を見たことがあります。。。
でも、CRPSは、触ると常時痛い。部分の痛みが基本で、広がることがある。
線維筋痛症は全身の痛みで、痛いときと痛くないときがある。。。

どちらも、脳が勘違いしているところは同じような。。。
Commented by m_chiro at 2009-10-05 15:38 x
慢性痛症の複雑な痛みは、リンクされた他の神経系によって修飾されて一層複雑になるのでしょうね。
やっかいな痛みは本当にお気の毒ですが、これもまた山と谷があるようですから、せめて落差のいないなだらかなリズムを作ることが出来れば、と思います。

以前の記事で、シャルルさんにアドバイスいただいたRSDの患者さん、医療の現場に復帰しました。どうにかこうにか頑張れているようです。
お世話様でした。
一歩踏み出せたら、大きな前進ですね。
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