めまい②
74歳の男性が「めまい」を訴えてみえた。
元気な老人で、いつもスポーツジムでのトレーニングと水泳を欠かさない。
以前から高血圧と不整脈で治療薬を服用している。
6年ほど前から「ふらつき」を感じて検査を受けているが問題は指摘されていない。
10ヶ月前頃から、突然のめまいに襲われるようになる。

突然、クラッと発作のように起こり、しばらく安静にしていると落ち着いてくる。
診察を受けているが、心電図でも耳鼻科の検査でも異常はない、と言われている。
「大したことはないから、あまり心配しないように」と担当医は言うらしい。

「めまい」や「めまい感」の患者さんが、徒手代替療法に施療を求めてみえることは稀ではない。
そのとき治療家が第一に心しなければならないことは、レッド・フラッグ(赤旗徴候)を除外する、ということに尽きる。
8月に九州カイロプラクティック同友会の夏期合宿に招かれて、その話をしてきたばかりである。

めまいのレッドフラッグは脳血管性障害である。
これは徒手療法の現場でも、数項目を簡単にチェックするだけでほぼ除外できるので、「めまい治療」には必須である。
更に言えば、高血圧や心疾患、動脈閉塞性疾患に糖尿病などの病歴も聞き逃せない。
また脂質の異常などにかかわる病理も聞いておけば、大いに参考になる。

この患者さん、最近ではプールでの歩行運動中にクラッときたらしい。
慌ててプールサイドにもたれているうちに落ち着いた。
こんな風に、いつとはなしに突然起るのだと言う。
高血圧と不整脈の病歴で、しかも発作的に起る「めまい」は、どうも怪しい。

心電図も問題なしと言うが、ベッドに仰臥位でいる間に聴診をしてみた。
大動脈弁、肺動脈弁、三尖弁、僧帽弁領域と聴診するが、全くと言っていいほど聞き取れない。
ベッドの上に起こしてもう一度聴診すると、今度は聞き取れるがいずれも弱い。
脈をみると、ゆっくりである。徐脈のようだ。
もしかしたら、Adamus-stork発作?

他に、めまいに結びつく身体所見が見当たらないので、24時間ホルター心電図を計測したことがあるか尋ねてみた。
「2年ほど前に行ったが問題なしだった」。
それではと言うことで、もう一度かかりつけの先生に携帯用心電図の検査を申し出てもらうように頼んで、その結果待ち、ということにした。

その後、患者さんの奥さんから電話があり、ホルター心電図計で異常が見つかり、急拠、県立病院の専門医に回されることになった、とのことだった。

数日後、また奥さんから診断結果がでたという電話があった。
完全房室ブロック、高度房室ブロック、洞不全症候群で、ペースメーカーで対応せざるを得ない、と言うことだった。

「めまい」の患者さんは、とても辛そうな回転性めまいを訴えていても、どちらかと言えば良性であることが多い。
一方、今回の患者さんのように、一見とても快活で元気なケースに実はとんでもない魔物がいたりする。
だからこそ、徒手療法家はレッドフラッグの除外を心しておかなければならない。
そんなことを強く感じた症例だった。
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by m_chiro | 2009-08-28 23:10 | 症例 | Trackback | Comments(0)
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