右往左往した患者さんの症状
62歳の技術職の職業婦人が、仕事に集中力がなくなった、仕事が遅くなった、体力もなくなっていつも疲れている、何もしたくない、身体中のアチコチが痛い、と言ってみえた。
治療室に入ってくる動作、着替えの動作も緩慢である。歩行は僅かに前傾で上体が動かない。摺り足ぎみに歩く。
ふと、「パーキンソン」が頭をよぎる。
「前からそんな風に歩くの?」と聞くと、「歩き方は同じ」らしい。

「疲れるって言うけど、具体的にどんな具合に疲れを感じるの?」と聞くと、「とにかく日中でも眠くなるし、今まで普通にこなしていた仕事なのに、パニックみたいになって、どうしていいか分からなくなる。体が思うように働かない」と言う。強度の便秘もある。
「いつ頃からそうなったのか」と尋ねると、「徐々にだが、特に2週間前ぐらいから気になりだした」そうだ。
以前から整形外科に通院しており、MRIも撮って「頚椎症」の診断を受けている。鎮痛の注射と電気治療、鎮痛薬も処方されている。

深部反射もバビンスキーも正常。右上肢、上胸背部に強いこわばりがある。肘関節の他動的に屈曲/伸展すると、微妙なひっかかりがある。膝関節でも微妙だ。
全体的に関節の可動性が少ないが、頭蓋は顕著だった。まるで地蔵さんの頭を触っているような感じだったが、若い頃から美容院に行くと頭皮が硬いと言われてきたようである。

抑制反応のある信号系をリセットして頭蓋療法を中心に治療を行ったが、なかなか頭蓋リズムを回復させるには至らなかった。それでも背部の筋は多少弛んで楽になったと言う。が、治療後に患者さんに伝えたことは、一度、神経内科で診ていただいてパーキンソン病の除外診断をしてもらいたい、ということだった。

早速、神経内科を受診すると、CT撮影で問題はないとされた。そして、心理的なものだろうから精神神経科で診てもらいなさい、と言う結論になった。
今度は神経科に行き、「うつ病」と診断されて薬物治療をすることになる。
それでも思うように改善しない患者さんは、いつものように整形外科での鎮痛の注射と電気治療を頼りにしている。

一向に改善の気配が見えない患者さんは、もう一度、神経内科に再診した。
すると神経内科医が「一体何を調べてもらいたいのだ?」と取り合ってくれなかったらしい。

こんな繰り返しだったが、私も数回治療をした。頭蓋のリズムが大分回復するようになると動きも幾分スムーズになり、仕事もどうにかこなせせるようになった。それでも、通常の半分くらいのようである。

次に暫らく振りでみえた時には、左の手足に振戦が出るようになっていた。この間、少しでもよくなりたい一心で、紹介されるままに医院やいろいろな代替療法を試してみたようである。原因が分らない不安感を覗いたようだった。

振戦はローリングを伴っており、動きを指示すると止まる。つまり静止時振戦である。身体徴候はパーキンソン病を疑わせるものだった。何よりも、パーキンソン病の臨床症状である4大症状の「安静時振戦」、「筋固縮」、「緩慢動作」、「姿勢反射」、これらの徴候が揃ったわけである。こうした身体徴候を記して、もう一度、神経内科に紹介した。精神科で処方されている処方箋も持参するように指示した。
その結果、MRIに異常はないが、「どうもパーキンソンのようだ」ということになった。担当した神経内科医は「MRIに異常が出ていれば良かったのだけど」と言ったらしいが、良かったのは医師の都合に過ぎないのだろう。そもそもパーキンソン病が画像診断できるのは、どの程度の割合だと言うのか。それでも、「L-ドーパ製剤」を処方されて経過を観察することになった。

この患者さんにとっては、何の解決になったわけではない。でも、不安に明け暮れているよりは、やるべきことが見えてきた、と言うことだろう。
専門医が画像診断ばかりに頼らずに、身体徴候をしっかりみてくれていたら、こんな右往左往しなくてもよかったのにと思う。
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by m_chiro | 2009-07-28 00:56 | 症例 | Trackback | Comments(0)
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