自律神経系は「痛み関連の脳内サーキットをドライブする」
「ミネアポリスの痛みの研究日記」の記事・「2009.07.04 頭痛と自律神経」を興味深く読んだ。何が興味深かったかと言えば、「自律神経系の過剰な興奮が、痛み関連脳内サーキットの活性をdriveするのではないか?」という件である。

ミネアポリスの先生の記事によれば、偏頭痛の発生機序は概ね明かのようである。つまりは血管が拡張するからで、次の方法が対策されることになる。
要するに、脳髄膜の血管拡張を抑制すること、神経核での侵害ニューロンの興奮を抑制することが臨床的には肝要だという話である。
ところが、ここからが興味深い。

『何故、脳髄膜の血管が拡張するのか?何がトリガーなのか?』
臨床的には、臭い、音、光、ストレス、疲労、天候、気温、女性なら月経周期、その他、様々なトリガーが挙げられ、それらが偏頭痛の発生に関係していることは確実だ。しかし不思議だ。これらの偏頭痛のトリガーはいずれも侵害(痛み)刺激でない。いわゆる痛み神経(侵害受容器、実際は三叉神経)を直接興奮させるわけでない。例えば光そのものがこれら末梢神経の終末部を活性化させるわけでない。

と、ミネアポリスの先生は書いている。確かにそうである。
基本的に、痛みは生体の警告信号系である。したがって、侵害刺激でないトリガーが痛みを誘発するためには、それらにリンクする別の径路を想定しないと頷けない。

痛みの基本的な伝達径路は、終末受容器への侵害刺激が上行性に伝えられ、脳の認知領域で痛みを感知するルートを辿る。ところが近年では、ストレスや情動などの心理的緊張が痛みを引き起こす、とする見解も散見するようになってきた。

これらのストレスは侵害(痛み)刺激ではない。ところがストレス反応は副腎を刺激する。そこに自律神経系が介在する要因が生まれる。
怒りや不安といった情動的なストレスは、交感神経を介して細動脈などの血管を収縮させ、組織の酸欠状態をもたらすのである。こうしたストレスが習慣化され、あるいは条件付け反応が起ることで副腎は更に刺激される。こうして血管が収縮し酸欠組織ができあがる。そこに発痛物質が分泌・遊離されて侵害受容器は興奮し痛みが伝えられる、とされている。
基本的な痛みの伝達ルートとは逆方向性に痛みルートが修飾されて、組織の終末受容器が侵害される環境が出来上がるのだろう。
それでも、こうしたストレスによって修飾された痛みルートは、どのようにして腰とか、首とか、肩とかを選択的にターゲットにするのか。その仕組みはよく分からないところである。

ミネアポリスの先生も自律神経系の回路とのリンクを想定されている。

そこで一つ考えられるのが自律神経系の回路とのリンクだ。気圧、ストレス、光etc、これらはいずれも活発に自律神経回路を活性化する。この自律神経系の過剰な興奮が痛み関連脳内サーキットの活性をdriveするのではないか?と。
我々は過去数年、基礎的研究の結果、ある刺激(痛み刺激でない)で自律神経系を過剰に興奮させると三叉神経系の興奮をドライブするという事実を見つけ、再現性のあることを示した。

自律神経系を侵害刺激でない方法で興奮させると、この過剰な興奮が痛み関連脳内サーキットの活性をdriveするのではないか、と言う。
面白いなぁ~...。
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by m_chiro | 2009-07-08 12:05 | 痛み考 | Trackback | Comments(4)
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Commented by syaruruk at 2009-07-08 19:27
>自律神経系を侵害刺激でない方法で興奮させると、この過剰な興奮が痛み関連脳内サーキットの活性をdriveするのではないか

面白いですね。かえって単純な侵害刺激のほうが罪が軽いような・・・。
でも、なんでもない刺激が、そういう回路を作ってしまうのを防ぐことができれば・・・。
あるいは、できた回路を何かに転嫁させることができれば・・・。


とにかく、先生がお元気になられてよかったです^^。
Commented by 痛みのブログの人 at 2009-07-09 00:54 x
私の拙い記事を紹介下さり有難うございます。自律神経系と疼痛系のcoupling、仮説はできても、また臨床的に経験する現象であっても、実験レベルで再現するとなるとかなり困難で、またたとえ再現できたとしても現実の生体、生理的状態からはかなり逸脱したモデルであることが多く、なかなか容易ではなく苦戦しております。ただ最近、ある自律神経系の神経核を刺激すると三叉神経脊髄路核の侵害受容ニューロンが興奮するという現象を見つけたこともあり、やはり自律神経ー侵害受容のリンクは間違いないものとは思っています。
Commented by m_chiro at 2009-07-10 13:06
syarurukさん、痛みの修飾回路はまだまだ面白い発見がありそうですね。

この一週間は随分と寝貯めをしました。
お腹の大掃除もしたし、普通に生きていることは幸せなことですね。
ご心配いただきました。ありがとうございました。
Commented by m_chiro at 2009-07-10 13:16
>ある自律神経系の神経核を刺激すると三叉神経脊髄路核の侵害受容ニューロンが興奮するという現象を見つけたこともあり、やはり自律神経ー侵害受容のリンクは間違いないものとは思っています。

ミネアポリスの先生、こうした裏づけに私たちは力をもらいます。
グラント正式決定されるのが待ちどうしいですね。
この賞の重さを私などは実感できませんが、
多くの研究論文の中から選考されるわけですから、研究者にとっては勲章のようなものなのでしょうね。
今後の御活躍を祈っています。
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