立位と歩行で右ハムストリング筋に痛みが...
40代の介護士の女性が、2週間ほど前から長時間の立位や歩行で右ハムストリング筋に痛だるさを感じるようになった、と言って来院した。

際立った身体所見は、右腸腰筋の筋力の低下、および右ハムストリング筋に数箇所の圧痛が見られることである。
非代償性の傾斜と捻転がある。おそらく介護労務での身体所作が作っている歪みなのだろう。
ありふれた単純な問題に思えたので、腸腰筋の安定に焦点を絞って治療を行った。
ハムストリング筋にある圧痛は、対側の前腕部に交差する反応点がみられなかったので直接リリースした。治療後に動作痛を確認すると良好である。
在宅での腸腰筋のエクササイズ、仕事での身体所作の注意事項、などを指導して様子をみてもらうことにした。

その女性が2回目の治療にみえた。
治療後の大きな変化はない。変化したことは、具合が悪い時に腸腰筋エクササイズを行うと楽になった、こと。
「でも今日は具合がいい」、と言う。
緩解因子は何かと尋ねたら、「今日は仕事が休みだから」。
では、「休日は全く痛まないのか?」と言えば、「そうでもない」。
台所仕事で長時間立っていると、やはり右ハムストリング筋に痛みが出るそうだ。
やはり、前回同様に右腸腰筋の筋力が低下している。指導事項を行っても変化していないということは、単純に腸腰筋やハムストリング筋の問題ではないのだろう。

と言うことで、視点を変えて再チェックを行った。先ずは腸腰筋を安定させてから、問題点を検証し直す。
すると、横隔膜と後環椎後頭膜への負荷により、安定させた腸腰筋の抑制が起る。
横隔膜は、最大呼吸時に抑制反応が顕著に出る。どうも呼吸の問題がありそうだ。

「ここ1ヶ月ほどの間に、呼吸に関係したことで特に集中したことはなかったか」、尋ねてみた。
最大呼吸で止めるような運動をしているとか、あるいは歌や発声に関係したレッスンを受けているとか、そんなことである。

5月頃から施設の入居者を一堂に集めて、毎日、呼吸運動の指導をするようになったらしい。
「分りやすく指導しなければならないので、特に強調して見せながらやらせている。だから、余計に力が入っていると思う」、とも言う。
「それで休日は調子がいいんだろうか? そう言えば、その呼吸運動の時間の後に余計具合が悪いようだ」。

きっと、無理な呼吸運動が引き金になったのだろう。
腸腰筋は横隔膜を貫いて出るので、両者の機能は相関しあっている。
横隔膜を安定させれば、腸腰筋の安定も持続できるだろう。
というわけで、ターゲットを横隔膜と後環後頭膜に変えた。
横隔膜と後環椎後頭膜をリリースして、再び負荷チェックを行うと腸腰筋の抑制反応も出なくなった。

現段階で良好なので、あとは結果を待とう。
これでも好転しなければ、再々チェックで、また仕切り直しである。
治療は推理ゲームの繰り返しのようなところがある。
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by m_chiro | 2009-06-19 23:03 | 症例 | Trackback | Comments(5)
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Commented by m_chiro at 2009-06-21 02:19 x
chidori様へ。
>いきなり無礼な質問とお感じになるなら無視して下さい。
と、思われているような質問ならしないことです。本音を言えば、そんな質問に応えたくもありません。
その上、私は貴殿に対する情報は何も持ち得ていません。
貴殿がどのようなことをされているのか、膜系の治療に対してどの程度の認識や知識を持たれているのか、それすらも私にはわかりません。
もし御自身のことを公開するのが躊躇われるのであれば、非公開のコメントも可能なはずです。

>「リリース」ってどのようなことをしているんですか
と言う質問は、技術論を尋ねられているのでしょうか?
カイロプラクターやオステオパスが使う「リリース」と言う用語自体は、通常は「膜のバリアを解放する」意味で使います。もしも貴殿が別の意味で使われているのであれば、逆に御教示賜りたく思います。したがって、リリースの変化とは、膜のバリアが解かれた状態を言っています。その技術的なものは、直接法、間接法などさまざまですが、今この場で私自身の技術論を語るつもりはありません。
Commented by m_chiro at 2009-06-21 02:22 x
続きです。
>腸腰筋と横隔膜の関係はなんとなく分かります
何が分ったのでしょうか? 私は身体の現象としてそういう相関を想定してはいますが、医科学の領域に提示できる科学的根拠を持ち合わせてはおりません。カイロプラクティックの科学性なんてハンクソみたいなものです。でもそうした身体現象から、そこに潜む根拠や機序について議論を高めることは望ましいことだと思っています。

記事に書いたケースは、呼吸系の問題が誘因になったと推論しました。
この患者さんは毎日呼吸運動の指導を始めました。分りやすいように動作を強調しながら行っています。貴殿も試してみられたら、後頭下部にどのような負荷が加わるか体験できるはずです。カイロやオステの領域では、生理的な呼吸システムを「後頭骨-蝶形骨と仙骨リズム」に求めております。硬膜を繋いで行われる第一次呼吸システムとみた仮説です。後環椎後頭膜のバリアは、呼吸運動に影響していると推論しました。
Commented by m_chiro at 2009-06-21 02:29 x
再び続きです。

このケースの問題とすべき現象は、ハムスト筋にあるのでしょう。しかし、直接ハムスト筋にアプローチしても想定した変化が得られなかったので、誘因と思われるところから攻めてみました。
機能的な問題は、ルートがたくさんあるのでしょう。
どれが正しいという言うつもりはありません。
臨床の場で推論することが大切で、また面白い部分だと感じたことを記事にしてみたつもりです。
Commented by m_chiro at 2009-06-22 07:07
鍵コメ様、コメントうれしく読みました。
ありがとうございました。
もし、差し支えなければMLアドレスを教えてください。
Commented by m_chiro at 2009-06-23 01:40
鍵コメ様、ありがとうございました。
後日連絡させていただきます。
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