神経を二重構造体とみるべきか ②
②末梢神経は二重三重に防御され、滑り可動する構造体である
脊髄は、どこまでが脊髄? 脊髄、軟膜、くも膜、脳席髄液、硬膜、脊柱管まで? 末梢神経は、どこまでが神経? 軸索、内膜、周膜、上膜まで? 例えば、腰はどこまでが腰? 膝はどこまでが膝? 解剖学的区分や名称は、人の都合で決められている。 簡単に「神経」とひとくくりに使っているが、下図にあるように神経線維は結合組織の層に囲まれた束になっている。 そして、この組織形態そのものが機能的なユニットになっていると思われる。 そもそも結合組織だけで、末梢神経全質量の50~90%を構成しているとされているのである。この結合組織は、神経内膜、周膜、上膜に分けられている。 それぞれの結合組織の特徴をまとめると、次のようになる。 神経内膜(図の黄色の部分)の特徴 1.神経束内にある結合組織(いくつかの神経線維で構成された最初の束) 2.グリア細胞が取り巻く(それぞれの神経線維を増強) 3.神経内膜の基質は高密度の膠原線維 4.膨張性の柔軟な構造体 5.栄養補給と保護機能を兼備 6.液圧に重要な役割を果たす 7.神経内膜内スペースで僅かな陽圧を保つ(神経に一定の環境を提供) 神経周膜:perineurium(図の緑色の部分)の特徴 1.いくつかの内膜束を取り囲む結合組織の鞘(最初の束の集合による第二の束の形成) 2.線維芽細胞で密集した7~8つの層で構成 3.保護および異物に対する防御となる隔壁 4.外圧に対する抵抗を提供 5.周膜は神経が極度の牽引にさらされると、最終的に損傷する結合組織 神経上膜:epineurium(図の青色の部分)の特徴 1.すべての末梢神経幹を取り囲む鞘を形成する結合組織 2.末梢神経の末端まで伸びる硬膜の延長 3.二重の機能的役割 1)内側の上膜の機能で、神経束どうしが分離した状態を維持 2)上膜の外側は神経束を取り囲む明らかな鞘を形成 4.極小血管の新生を構成する神経脈管(vasa nervorum)の存在 5.「神経の神経(nerve nervorum)」を保有し、受容器を持つ 6.「神経の神経(nerve nervorum)」自体および脈管周囲神経叢から枝を伸ばし、上膜にある終末から周膜、内膜に向かう 7.可動性のある構造体 8.神経束間での滑走を容易にする こうしてみると、末梢神経は脊髄同様に二重のシステム構造体とみなすべきではないかと思える。 神経線維自体と結合組織は、その機能的役割が全く違っているからである。 神経線維そのものと、その結合組織は、機能的みれば別物と見た方がよさそうだ。 これだけ神経線維が保護されているのであれば、外圧に対する抵抗に強く、可動性に富んでいる組織であることが分る。 受容器を持つとされる「神経の神経」も、どのような刺激に対して反応するのかよく分っていない。 この神経菅が圧迫されたとして、痛みが起るには相当の損傷が加わったときであろうと思われるし、また伝導が阻害されるようであれば麻痺の病態に至るのではないだろうか。 上膜が損傷でもしない限り、簡単には発火しないように思えるのだが...。 ただし、神経の結合組織を別の機能システム系として捉えると、侵害受容性の痛みが起こる可能性が残されてくる。 (次に続く)
by m_chiro
| 2009-05-05 01:10
| 痛み考
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