整形外科領域は、これでいいのだろうか?
一昔前までは、整形外科経由でみえる腰下肢痛の患者さんは判で押したように「椎間板ヘルニア」と診断されていたように思う。ところが昨今では、中高年の腰下肢痛のほとんどが「脊柱管狭窄症」と診断されてくる。

前回記事にした「手術の明暗2態」のケースも診断名は「脊柱管狭窄症」だった。記事にも書いたように、専門医に紹介した四頭筋の萎縮と前傾骨筋麻痺のAさんのケースでは末梢性の絞扼障害を疑ったが、「脊柱管狭窄症」と診断されたようである。
腰下肢痛患者のBさんは「脊柱管狭窄症」と診断されて手術を受けたが、術後の経過が思わしくなく最終的にRSDと診断されている。
「脊柱管狭窄症」の診断名は、患者に説明する上でも、レセプト対応でも好都合の病名なのだろうか? 

加茂先生のブログ記事「根性痛を信じられますか?」に掲載されていた「脊柱管狭窄症の診断サポートツール」を見ても、こんな根拠のない検査で脊柱管狭窄症の診断をされるのかと驚かされる。

先日みえた60代男性の患者さんは首や肩と肘の痛みがあり、両手の手指背側に痺れもある。病院の整形外科を受診したら、MRIの画像所見で頚部の脊柱管狭窄症と診断された。
「手術しないと、今に大変なことになりますよ」の脅し文句(?)に驚いて、手術することに決めてきたと言う。

簡単なマニュアル検査をしてみると、深部反射も感覚も筋力にも何等問題がない。
橈側手根屈筋に圧痛点が数ケ所ある。頚部の可動域も正常である。痛み症状はあるが運動制限のある痛みではない。だから建設関係の仕事も難なくこなしているし、ゴルフも楽しんでいる。手術の緊急性すらない。手術はやめなさい、とアドバイスした。

そのことを受けて、その整形外科医はそれならばと脊椎専門外科医に紹介状を書いてくれたらしい。

それで早速、脊椎専門外科医の診察を受けることなった。
脊椎専門外科医はMRI画像を診て、「ほら、ここの神経が死んでいる」と言い、一通りのマニュアル検査をしては、しきりに首を傾げていたらしい。

私が行わなかった検査では「片脚飛び」を10回やらされたが、同じ地点で飛べなくて着地の足の位置が動いたようである。そのときだけは、「相当足に来ているな」と言われたようだ。でも結局は、緊急の手術の必要はないから1年後に再検査をすることに落ち着いた。

最初の時点で、先ずは神経学的なマニュアル検査を行い、必要性が認められたらMRI等の検査を行うというプロセスを踏めないものだろうか。

そうかと思うと、先日のTV番組(「たけしの知らないと怖い家庭の医学」)の腰痛特集では、県立医大の先生方が登場し、85%の腰痛は原因を特定できない「非特異的腰痛」としていた。これらにはストレスなど心因性の原因に注目が集まっていた。
だからどうだと言うのだろう。
犬や猫でも飼って癒されなさい、とでも言うのだろうか。
整形外科医は、腰痛に対して何をしてあげると言いたいのだろう。
残りの15%が特異的腰痛で、椎間板ヘルニアや脊柱間狭窄症など病理的所見が明確な腰痛なのだそうだ。画像での特異度が痛みにどう反映されていると言うのだろう。

これでいいのだろうか、とつくづく思う
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by m_chiro | 2009-02-23 19:06 | 痛み考 | Trackback(1) | Comments(4)
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Tracked from 心療整形外科 at 2009-02-23 20:24
タイトル : 脊柱管狭窄症って???
整形外科領域は、これでいいのだろうか? これでいいはずがない。 私が本に書いたように、中高年で足腰が痛いと脊柱管狭窄症と診断するのがブームになっている。 今日はこんなメールをいただいた。 今日、妻が先生の本を探して来てくれました。びっくりしております。古代からある普通の病気に、こんな事があっていいものかと驚いております。先生に感謝、妻に感謝です。私のケースは以下ですが、よろしくアドバイスお願い申し上げます。 この方は脊柱管狭窄症という診断で2度手術を行いましたが、よくなるどこ...... more
Commented by syaruruk at 2009-02-23 20:56
犬も猫もいるけど、癒されない。。。のかなあ。。。わたし。
片足とび10回なんて、出来るだけですごいけど^^;
Commented by sansetu at 2009-02-24 10:06
片足跳び10回やらせる医者って・・・。それで着地点がずれただけで「相当足にきている」って言う医者って・・・。それだけで笑えます。患者さんが気の毒です。
話は変わりますが、一昨日の夕方のニュースで山形の信用金庫の取り組みが紹介されていて、さすがは庄内藩士の土地!!と感心しました。
マネーゲームに参加していなかったことで金融危機の影響も少なく、普通の銀行なら絶対に融資しない地元企業に融資し、共に経営を行い、地場産業を盛り上げている姿勢に清々しいものを感じました。本物の助け合いの精神がいまだ機能している金融界の奇跡だな、と思いましたよ。ますます山形が好きになりました。
Commented by m_chiro at 2009-02-25 13:23
syarurukさん、癒されてよくなる人は、それだけで幸せ者です。
そのことを否定はしませんけど、腰痛患者の85%には適応しませんよね。
syarurukさんとこの猫ちゃんにも、ホナちゃんにも私は癒されてますよ。
シャルルさんも十分な癒しをもらっていることでしょうね。


Commented by m_chiro at 2009-02-25 13:24
sansetu先生、片足跳び10回は笑えましたね。

「先生、お手本を見せてください」と言ってやればよかったのに!
と言ってしまいました。

患者さんは緊張しまくりで、余計にぎこちなく跳ねたみたいです。
奥さんが見ていて笑ってしまったと言ってましたが、「相当足に来ている」と言われて笑いも吹き飛んで固まってしまったそうです。それでまた笑えました。

山形の信用金庫も地域密着型で頑張っているみたいです。
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