手術の明暗2態
Aさんは60代男性で、昨年8月頃から右下肢に力が入らないと訴えて、昨年10月末に来院した。卓球やゴルフを趣味とし、日常的によく運動している。
既に整形外科医院に通院しており、MRIで腰椎のズレがあることを指摘された。
牽引と注射を行ってきたが、一向に改善しないので整体治療など色々試した。
それでも変化がない。

右大腿部筋群の筋萎縮があり細くなっている。本人に確認させると、その違いに驚いていたから全く気づいていなかったのだろう。大腿四頭筋の筋力低下(grade 2)。つまさき歩行は可能だが、右の踵歩行(grade 0)不全。大腿四頭筋、前脛骨筋から足背にかけての触覚鈍麻。痛みは訴えない。
神経障害を想定し、専門医の診断を仰ぐように説明する。

その患者さんが先日みえた。
以前住んでいた横浜の病院の整形外科を受診し、12月中旬に手術を受けたそうだ。
ご本人も詳細なことは忘れてしまったようで正確なことは不明であるが、「脊柱管狭窄症の診断で、窓を開けて減圧する簡単な手術を行ったという説明だった」と話していた。
手術部位その他の詳細も不明であるが、手術の翌日には踵歩行が出来るようになり普通に歩けるようになった、と喜んでいた。
6日間で退院、通常の生活に復帰した。

初診の状態との違いを知りたいからと、検査と治療を依頼された。
手術から2ヶ月近く経過している。
徒手検査で、初診での問題点は解消されていた。
大腿部の筋萎縮はすぐには元には戻らないだろうが、またスポーツを再開して鍛えて行きたい、と話していた。
ともかく、よかった。

Aさんが術後の経過をみせに来院したその日に、前後して60代女性(Bさん)が初診でみえた。
一昨年の夏に、脊柱管狭窄症の診断で手術を受けている。
腰痛と、長時間歩くことで両下肢が痛苦しいくなる状態だったらしい。
脊柱管が狭くなり脊髄が圧迫されているのが原因とされて、迷うことなく手術を受けたのだそうだ。

ところが、手術が終わり麻酔も覚めきらないうちに激痛を感じて叫んだ。
でも、手術は成功したと告げられたが、術後から腰痛と下肢痛に悩まされることになった。
2ヶ月間入院したが、結局、腰痛と下肢痛を引きずったままである。
術前より症状は悪化した、とBさんは言う。

同じ脊柱管狭窄症と診断されたが、Aさんには痛みはなく筋萎縮と麻痺があり歩行不全があった。それを本人は「重だるい」と表現していた。
Bさんは痛みに苦しんだ。

麻痺と痛みという正反対の症状が、同じ病態とされることは大きな疑問とするところである。
Bさんは、術後にペインクリニックでも診察を受けた。
そこでは、「複合性局所疼痛症候群、RSD」と診断されている。
脊柱管狭窄症の症状とされた痛みと、その手術は一体何だったのだろう。
Bさんの両下肢の皮膚は確かに黒ずんで、色調に変化がみられる。
「手術前はこんなではなかったのに...」と、Bさんは手術したことを悔やんでいた。
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by m_chiro | 2009-02-17 17:24 | 痛み考 | Trackback | Comments(5)
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Commented by sansetu at 2009-02-17 18:46
RSDですか。手術でなった可能性もありそうですね。でも注射1本でも起きる時は起きるという事で、でもそれを恐れていたら医療は成り立たないわけで、でも告訴して勝訴した事例があるとも読んだことがあります。
私はたまたま自分が習った銀鍼の接触鍼法以外の、通常のプスプスと刺される鍼が大の苦手で、それで自分のところでは管鍼をするにも毛鍼、霞鍼の太さを用いているのですが、あとになってこれはRSDの予防にもなっていることが分かり、開業以来、微小刺激でやってきてよかったと思ったことがあります。もっとも鍼でRSDを発症したという話はまだ聞いたことがないのですが、以前このことをブログ記事にしたら、加茂先生からも「微小刺激がよいです」とコメントを頂いたことがあります。
Commented at 2009-02-17 19:13
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by m_chiro at 2009-02-17 23:33
sansetu先生、CRPSなどの分類もややこしいですね。
なかなか症状は杓子定規に分けられるほど単純ではなく、複合していることが多いようで。
微小刺激でよいということも、門外漢が概念を応用できるのですからうなづけます。
Commented at 2009-02-17 23:33
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by m_chiro at 2009-02-17 23:36
鍵コメさま、ご面倒をおかけしましたね。
はずしてしまいましたけど、良かったです。
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