指趾粘液嚢腫と痛みの混在
昨年の11月のことである。
腰痛で来院していた中高年の婦人が、腰の痛みも消えたので治療も最終日となった。

帰り間際に、「これは治りますか?」と言って、右母指に巻いたキズバンを剥がしながら聞いてきた。
見ると、母指の爪の付け根(経穴で言えば「少商」のところ)が膨らんでイボ状に膨らんでいる。とても痛むのだそうだ。
昨年の5月から皮膚科で診てもらっているが良くならず、別の皮膚科に転医した。
が、相変わらずの痛みと、膨らんでは消え、膨らんでは消える粘液嚢腫が続いている。

「皮膚科の先生はなんて説明するの?」と聞いたら、「原因不明で、治り難い。再発を繰り返すから、あまり気になるようだったら切除しましょう。でも、またの再発するんだよね」と言われたらしい。
治療は、抗生物質と塗布剤を処方されているが、長くなっているので今は抗生物質は服用を止めている。

病名は覚えていないと言うが、「指趾粘液嚢腫」だろう。
右の母指、ちょうど正穴H1のところである。破れかけている。
嚢腫が出るときと、破れるときは、特に痛むらしい。
試に、陰陽交差で左の胃経の井穴を刺激すると、楽になるというので皮内針のバイオを貼らせてみた。
それから2日後には綺麗になって痛みもなくなった、と大喜びで見せにこられた。

ところが、それから1週間も経った頃にまた腫らんできた。
でも痛みは随分少なくなっている(VAS2~3/10)。以前に比べると、気にならない痛みだ、と言う。それも膨らむときだけの痛みに限定されている。
この嚢腫の粘液は、コラーゲンが皮膜を破って皮下に膨らんでくるとされている。
皮膚の線維芽細胞が機械的刺激によって性状が変化して、粘液をつくりはじめるということのようだ。粘液の膨らみと強い痛みがあるという違いはあるが、ガングリオンの表層版のようなものだろう。

そこで、機械的刺激で皮膜に裂孔が出来ていることを想定した。
対策として、腫瘤が吸収された頃を見計らって、第一関節をサージカルテープで固定し動きを制限してみたのである。
すると、嚢腫が再び膨らんでくることはなくなってきた。もうしばらくはテープで動きを制限させて、様子を見ることにした。
それから1ヶ月毎に経過を見せてくれる。今日もみえたが、綺麗になっていた。7ヶ月も痛みと噴火を繰り返した粘液嚢腫だった。

このケースでも、嚢腫という器質的な病変に痛みが混在していた病態を考えさせられた。
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by m_chiro | 2009-02-13 23:35 | 痛み考 | Trackback | Comments(2)
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Commented by sansetu at 2009-02-14 14:21
実に興味深い症例ですね。一見器質病変ですが、陰陽交差が効くということは、かなり機能病変も混在しているということですね。特に痛みに関しては。そしてテープで器質への対処も行なったということで、とてもよい治療となりましたね。やっぱりどんな疾患であれ、器質、機能両面からの推理とアプローチが大切ですね。
Commented by m_chiro at 2009-02-15 22:02 x
sansetu先生が常に主張されておられる混在性ということを押さえておくことで、器質病変と機能病変を分けて捉えることが出来るようになるのだと思います。我々の守備範囲も広がります。
多くの痛みは機能病変だ、ということを実感するばかりです。
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