椎間板ヘルニア炎症説への疑問
仙台市医師会が発行する「健康だより」No94(2008.8)に松田病院・笠間忠夫副院長が書かれた「椎間板ヘルニアと言われたら」と題する記事が掲載されていた。
その一項目に「腰にヘルニアがあるのに、なぜ下肢が痛むのか?」について書かれている。


「腰にヘルニアがあるのに、なぜ下肢が痛むのか?」
「痛み」は、「それ専用の神経終末」が刺激された時に、そこから信号が出て脳まで到達して、初めて「痛み」として感じられます。たとえば、足をケガした場合は足にある「専用の神経終末」が刺激されて、脳まで通じてその部位の痛みとして感じます。おかしい
と思うかもしれませんが、脳・脊髄および神経(幹)には痛みを感じる専用の組織はありません。そのため、正常状態では、神経そのものは途中で圧迫されても痛みを感じません。

しかし、神経に炎症があると圧迫により、その部位で「痛み信号」を出してしまい、それが脳まで達して、その神経が本来行っている部位の痛みとして感じるようになってしまいます。最近になって、椎間板の中に炎症を起こす化学物質が地雷のように埋め込まれていることが分かってきました。ヘルニアにより、この埋め込まれていた物質が放出されて炎症を起こし、そこにヘルニア自体の体積で神経を圧迫して「痛み信号」を出してしまうのです。


前段で、神経(幹)そのものが圧迫されても、そこは受容器ではないから痛みを感じない、と書かれてあり、「あっ、正論だ!」と思って読み進むと、後段では椎間板ヘルニアの炎症説が飛び出した。

まとめると次に図式になる。
1.神経に炎症がある(前提条件)
2.椎間板ヘルニアによる機械的刺激(条件)
3.下肢痛が起こる(結果)

前提条件が正常な神経ではなく、炎症がある神経の場合の限定される下肢痛のことだろう、と思って読んだが、どうもそうでもないようだ。

前提条件の神経の炎症は、なぜ起こったのか?
「椎間板の中に炎症を起こす化学物質が地雷のように埋め込まれている」ために、椎間板ヘルニアが起こると「炎症物質が放出されて炎症を起こす」のだそうである。

つまりは、こういうことなのだろう。
1.正常な神経(前提条件)
2.椎間板ヘルニアによる化学的および機械的刺激(条件)
3.神経幹の炎症と下肢痛(結果)


「神経(幹)は痛みを感じる専門の組織ではない」と説明しているのだが、では化学物質を受容する受容器はあるとでも言うのだろうか?
そもそも神経幹は受容器ではない。
都合のよいときだけ受容する組織を認めるのは、論理的にも矛盾がある。

「椎間板ヘルニアも、大半は吸収されて自然に治ります」としながらも、結局は、麻痺症状や膀胱直腸障害には24時間以内の手術を、後は痛みの程度で手術の適応を決める、としている。

やはり、この先生も椎間板ヘルニアという病態に、疼痛と神経麻痺という正反対の現象が共存するものと考えているようだ。

残念ながら、加茂先生の主張のような合理的な見解はなかなか登場しない。
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by m_chiro | 2009-01-29 18:16 | 痛み考 | Trackback(1) | Comments(4)
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Tracked from 心療整形外科 at 2009-01-29 23:31
タイトル : 根性疼痛の矛盾
椎間板ヘルニア炎症説への疑問 椎間板ヘルニアと診断されたが、現在、線維筋痛症(多発性の筋筋膜性疼痛症候群)として治療しているケースが現在4例ほどある。過去にもいくつもあった。 あるケースでは、腰~下肢痛、頚~上肢痛なのだが、腰はMRIでヘルニア、頚はヘルニアなし。こんなの診断ではない。 ヘルニアや脊柱管狭窄症と診断を受けている人は筋痛症と思ってよいと思う。 ヘルニアがあっても痛みがないことが多いのだが、この矛盾を説明するのに、髄核による神経根の炎症説がある。 では、髄核と...... more
Commented at 2009-01-29 21:11
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by m_chiro at 2009-01-30 21:30 x
鍵コメ様、それはそれはお疲れさまでしたね。
「話せば分る」は、本当に至難のことかもしれませんね。
でも、その心意気には感じるものがあります。
Commented at 2009-01-30 22:54
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by m_chiro at 2009-02-02 18:05
鍵コメ様、なんとかうまい方法を見つけたいものです。
セルフが出来るようになると、見えてくるものがあるような気がするのですが...。
思案してみます。
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