不随意の動きの問題を考える

いつもお世話になっているsansetu先生の記事に、興味深い情報が紹介されていました。

「松本義光先生の教え」
http://sansetu.exblog.jp/10033579/


sansetu先生の身体観を読んでいると、私も同じ方向を見ているのではないかと思うことがしばしばあり、それがどんな共通項の上に築かれているのだろうと気にかけておりました。
前掲の記事を読んで、松本善光先生の考え方を知りました。

Sannsetu先生が触発されたとする松本善光先生の考えを読むと、方法は違っても近い方向に視点が向いていることを知ることができて腑に落ちたような気がします。
私が誤待った解釈をしていなければの話ですが...。

脳は、運動の制御をその役割にしています。すべては筋肉に出力されますが、その筋制御は下位脳での反射的な信号に依存しています。つまり不随意の筋制御です。
ここでの信号系に異常なタイムラグが生じると(私がブログで「筋運動における始動の遅れ」と表現していること)、その遅延のままに上位脳に伝達されます。
このフィードフォワードの情報伝達にしたがって、出力として表現される筋活動はその遅延された筋の始動の上に表出することになります。

このタイムラグを修正する方法として、松本先生やsansetu先生は意識的な動きの制御を学習させて(フィードバック)、そこから不随意のタイムラグも修正しようという試みではないかと思います。
それは両先生が述べておられるように、これはなかなか難しい修練が必要なのでしょう。

私は、下位脳での信号系のタイムラグを直接リセットすることで、その情報の信号を上位脳に伝える方法を使っているわけです。

二軸運動を研究している京都大学の小田伸午教授は、ヒトの身体運動における左右差には典型的な特性があると述べていました。それは左前方と右後方でのクロスされた筋活動の弱さが見られるとするものです。この特性の現れは簡単に調べることができます。
この交差された弱化は身体の捻じれ現象を作りやすく、これが警告系の起源とされるナメクジウオの「うずまき反射」に共通の警告反射のように思えます。

ところが、事はそれほど単純なものではないようです。ヒトは、こうした基本的な弱さを代償しながら複雑な協調運動を行うわけですから、実際にはさまざまな筋活動として表出されることになります。
これをトレーニングで修正する方法が模索されているのでしょう。
この方法を仮にフィードバック・トレーニングと呼ぶとしたら、私が行っている方法はフィードフォワード学習とでも言えるだろうか。
つまり下位脳での信号系をリセットして、ヒト本来の信号系として上位脳に学習させる方法ということになります。

実際には何を診ているのかというと、下図の除皮質に特有な持続性頚反射の原型のシグナルを参考にしています。
左から3例の図は除皮質の例で、右端は除脳固縮の図です。
除脳動物の頭部を身体に対して相対的に動かすと、固縮のパターンが変化します。
もし頭を一側に向けると、同側の四肢は一層硬く伸展され、反対側の四肢はやわらかくなる、というものです。
図は病的な反射(持続性頚反射)ですが、正常なヒトにもこの原型のシグナルが働いています。スポーツなどでも、よくこの反射の原型が使われているわけです。
この原型のシグナルが発信されないと、不随意の筋活動の始動は遅延してしまいます。
遅延して発信されている信号が上位に伝達されて、代償された筋活動として表現されることになるわけです。
c0113928_20441780.jpg


そのタイムラグの状態を、行動の筋である腸腰筋群でみつけます。左右どちらに顔を向けても、腸腰筋群に初動の等尺性の収縮信号(持続性頚反射の原始的な信号系)が正常に発信されるか、あるいは遅延しているか、をみています。
つまり信号系がONか、あるいはOFFかをみるわけですが、これは随意運動における筋のパワーを見ているわけではありません。
随意運動における不随意性の根源が、この下位脳(脳幹)からの信号系のタイムラグによるものだと考えているわけです。

こうした反射的な信号系が安定した状態から、sansetu先生の言われる日常動作の改善は「無理痛」の解決方法として重要になってくるのでしょう。
それには適切な指導者がまた不可欠なのです。
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by m_chiro | 2008-12-17 20:51 | BASE論考 | Trackback(1) | Comments(5)
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Tracked from 反証的鍼灸手技臨床 at 2008-12-18 22:48
タイトル : 脳関連でNSR
http://mchiro.exblog.jp/10361069 不随意の動きの問題を考える ↑は守屋先生のブログ、興味深い内容です。 それと最近見つけた、これも脳関連の興味深い文章です。 http://www.soufusha.co.jp/igaku/cpr.html なぜ日本の脳性麻痺医療はおくれてしまったのか NSRは随意筋の他動脱力連続運動により、関節・軟部組織の受容器から「動きのインパルス」を脳に送り、動いても(インパルスが発射されても)痛くないということを脳に教...... more
Commented by だるま at 2008-12-17 21:47 x
こんばんは。不随筋の制御が痛みのコントロールになると解釈したのですが・・・・・・野口整体に活元運動というものがあります。これは、錐体外路系の運動(意識的な運動以外の運動)をスムーズに行なわせる運動と言われております。私自身も、10年以上続けておりますが、からだの動きだけでなく、内臓等の動きも活発になるようです。(奇妙な動きですが・・・・)
Commented by だるま at 2008-12-17 21:57 x
都筑のコメントですみません。

>この交差された弱化は身体の捻じれ現象を作りやすく、これが警告系の起源とされるナメクジウオの「うずまき反射」に共通の警告反射のように思えます。

私自身、からだの動きの質量を足裏の3点で測る測定器で計測していると、捻れ現象が出てくると痛み等が出てくることが確認できており、先生の仰ることが合点いきます。私は、このねじれ現象は、からだの疲れが取れないことによって起こるような気がします。先生の解釈だと脳がリセットできていないという事になると思います。
Commented at 2008-12-18 19:55 x
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Commented by m_chiro at 2008-12-18 23:55
だるま先生、こんばんわ。
分かり難い内容だったですかね。私は、身体の捻じれ現象も出力信号の結果でしかないと思っています。身体に与える刺激はすべて上位脳に入力されます。痛みは視床より上位で認知されるわけですから、身体への適切な刺激で侵害受容性の痛みは解除できるはずなのです。随意運動も上位脳からの出力です。この随意運動には不随意性の運動が介入してきます。不随意性の動きは下位脳からの信号ですが、特に脳幹がつくる閉鎖回路に依存しています。ですから、身体に与える刺激やトレーニングで閉鎖回路のつくる不随意の動きを調整するのは大変難しい、と言うことになるのだと思います。なぜなら、身体への刺激は下位脳の関門でふるいに掛けられ通過するだけで上位脳に伝えられるからです。ですから、脳幹での閉鎖回路を介入刺激で調整するのは難しいのでしょう。これをコントロールできるトレーニングや刺激を使えるならば、それは素晴らしいことだと思います。ですから、私は直接下位脳の学習機能を利用する方法を模索しているわけなのですが...。
Commented at 2008-12-19 09:25 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
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