脳の三層構造から痛みをみる
腰下肢痛の50代男性がみえた。バイクでの配達業務を行っている。
慢性的な腰痛に加えて、1ヶ月前から右の下肢痛がひどくなった。思い当たる原因はない。
整形外科では、X-rayで腰の骨が捻じれているとされた。
にもかかわらず、湿布に鎮痛剤を処方されただけだった。
経過は思わしくなく、3週間前から歩行も辛くなり、夜間も痛みで目覚めることが多くなっていった。

右の大腿部に力が入り難いらしく、多少の跛行がみられる。
右の大腿四頭筋、中殿筋が、まるで廃用性の筋肉のように筋のトーンが低下している。逆に腸脛靭帯は過緊張を呈している。
左の骨盤隔膜は極度に緊張し、そのために仙骨尖部が左に大きくシフトしている。当然、大転子も突出したように触知できる。レントゲン写真を見なくても、歪んだ身体が見てとれる。

歪んでいるのが痛みの原因だったら、それを正してあげる以外ないない。が、骨盤の歪みも、腰の捻じれも、筋・筋膜の過緊張によって償された歪みなのである。したがって筋・筋膜系が調整されれば、こうした機能的な歪みは自ずと正されるはずである。

そこで圧変動と左骨盤隔膜のしつこい緊張をリリースした。弾性を感じないほどに緊張していた仙結節靭帯や仙棘靭帯のリリースが起こると、仙骨がリズム運動をはじめた。右の中殿筋のトーンも力強くなり、歩行もスムーズになった。
3日後に再診したときには、夜間の痛みも消えてよく眠れるようになり、とても楽になった、と語った。まだ少し大腿前部から前脛骨筋にかけて痺れるようなだるさがあるらしい。胃経のラインのようなので遠隔で解除キーを探すと、孔最と思われるポイントがよく反応してくれて痺れ感も消失した。とても素早く変化した症例である。

結局、脊柱や骨盤の歪みは筋・筋膜の緊張によって代償されたもので、痛みはその筋・筋膜にある受容器の興奮から起こっている。
こうした侵害受容性の痛みは、身体の信号網を上手く扱うことで皮質での痛みの認知を解除できる。もちろん皮質での認知に直接働きかけることも可能である。

では、なぜ痛みの信号系が作動するのだろう。
侵害受容器の閾値が下がったから...。なぜ閾値が低下したのだろう。閾値を決めているのはどこなのだろう。
交感神経が緊張したから...。なぜ今度だけ身体が反応したのだろう。

私は脳の三層構造から情報信号系を捉えて対応している。
乱暴にではあるが、脳を三階建てのビルと考えることにしよう。
すると、皮質は3階に相当し、2階が情動系で、1階は反射などの原始信号系が役割分担していることになる。
情報は、1階、2階を経由して、3階にあがる。痛みとして認知は、皮質に上がってくる情報によって起こるわけだが、実際に皮質上がる情報量は、ほんの数パーセントに過ぎない。多くは1階の閉鎖回路網で反射的な情報処理が行われている。

この1階での神経信号が十全であることがポイントではないか、と私は考えている。1階の情報系が揺らいでいると、その先に流れる情報もぶれる。したがって、1階部分の信号系のリセットはしっかりと行うようにしている。
このリセットを脳が上手に学習してくれると、身体のストレス軸がリリースされるから不思議でもある(この方法をセルフケアとして行うには、どこま可能だろうか)。
後は、皮質(意識に上がった痛み)と身体との情報ネットワークの滞りを解除してあげればよい。
それにしても厄介なのは2階部分の情動系である。上行性に3階にも影響し、下行性に1階にも影響を及ぼしてくる。今、取り組んでいるテーマです。
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by m_chiro | 2008-11-28 00:27 | BASE論考 | Trackback | Comments(0)
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