「ヘルニアという病名?」再考
11月12日の私の勉強記の日誌『「第11回・日本カイロプラクティック・セミナー」に出かける』に加茂先生が解説をつけて下さいました。二度勉強した気分で、感謝です。

「ヘルニアという病名?」

折角なので、復習のためにその部分を整理しておこうと思います。

椎間板ヘルニアによる症状の97%をマッケンジー・エクササイズで解決している脊椎外科専門の整形外科医・穴吹弘毅先生の講演「私の行う最先端の脊椎疾患に対する治療―保存治療から手術治療までー」を素材にしています。

では手術が必要な3%の椎間板ヘルニアとはどんなものか?
穴吹先生は、以下の3点が手術と保存療法を分ける要点であると主張しています。

1.腰の後屈エクササイズを行うと、エクササイズを行う前より下肢痛が悪化し、エクササイズ後も痛みや、しびれが続く場合。
2.腰の後屈エクササイズを1~2ヶ月行っても、腰痛が難治性で日常生活が著明に制限され、腰痛のために腰が完全に後屈できない場合。
3.下肢に重度の運動麻痺・膀胱直腸障害がある場合。


穴吹先生は「椎間板ヘルニア」という状態に対して、97%を保存療法で改善させ、3%が手術の適応であるとしているわけです。しかし、実際には何を改善させているのかと言えば「痛み」という症状です。
上記の3点がマッケンジー・エクササイズで改善しない症状で、手術の適応(3%)としているわけです。その中には「痛み」(1&2)と「麻痺」(3)という生理学的には全く違った現象が、椎間板ヘルニアに起因する症状としてあげているのです。

これを整理すると、つまりは今、椎間板ヘルニアに起因するとした症状が「疼痛性疾患」なのか「麻痺性疾患」なのかという問題が出てきます。この問題も、加茂先生がご自身のブログの中で再三にわたり指摘されてきたことです。

ヘルニアによって麻痺性疾患が起きることがあるのです。私は見たことがないのですが、それが馬尾症候群です。この病名も変です。症候群ではなくて、絞扼性障害です。つまり、48時間以内に圧迫を除去しないと不可逆となってしまう。緊急手術が必要なわけです。
「椎間板ヘルニアによる馬尾神経の絞扼性障害」・・・麻痺性疾患です。手術が必要です。
疼痛性疾患の代表的なものはたとえば「変形性膝関節症」「五十肩」です。上記の1、2は疼痛性疾患について書かれたものです。膝痛や肩痛で麻痺が生じることはないですね。
私は「疼痛性疾患」というカテゴリについて述べているのです。
麻痺性疾患は神経原性麻痺のことが多いのですから、どこかで神経が絞扼している可能性を念頭において検査しなくてはなりません。このとき、二次的に神経の混線が生じてCRPS2(カウザルギー)になることがあるのです。ヘルニアによるといわれている「あの痛み」がこれであるはずがありません。



下の図は、穴吹先生の論文「腰椎椎間板ヘルニア(LDH)に対するMckenzie exercise(ME)の効果」における調査対象77例(15歳~72歳:平均35歳/男性52例・女性25例/手術例8例を含む)の効果を示したものです。

c0113928_21535974.jpg

VASスケールで最初に約5あったものが、マッケンジー・エクササイズ直後で1.5に、2週間後ではほとんど0に近いスコアです。
エクササイズでこれほど顕著に変化すのは、疼痛性疾患の証拠です。つまり筋肉の痙攣性の病態がリリースされたからでしょう。

こうしたエクササイズで、2年後にはヘルニアが退縮した例も紹介されていますが、このこともヘルニアが筋筋膜からの2次的な代償した結果であることを窺わせます。マッケンジーの伸展エクササイズは、背部筋群の伸張反射により生じた筋筋膜性のトラブルをリリースする一つの方法なのでしょう。カウンター・ストレインやポジショナル・リリースなどでも同様の結果を出せるはずです。


五十肩、変形性膝関節症、いわゆるヘルニア、脊柱管狭窄症など「疼痛性疾患」を手術で治すという意味をよーく考えてみてください。これらの疾患に共通することは同じことなんです。ただ気まぐれにいろんな病名を付けているだけなんですよ。
「疼痛性疾患」「麻痺性疾患」このカテゴリをしっかり区別して別の病態、別の病気と思ってください。


だからこそ、我々のような徒手療法家が「疼痛性疾患」のお役に立てる機会があるわけなんですね。
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by m_chiro | 2008-11-16 21:59 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
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