「繰り返す難治性のめまいは首を疑え」
BPPV(良性頭位変換性めまい)や動揺病の背景にある頸部の問題および姿勢制御に関わるこの問題は、
経験する症状でもある。
体の揺れやふらつき感といった動揺病症状はもいれると、めまい感を訴える患者さんは、決して稀な症状ではない。日経メディカルの記事「繰り返す難治性のめまいは首を疑え」は参考になる。

そのような患者さんに遭遇したら、「めまい出現前のエピソードを聞き出すこと」が大事だと分かる。
そこのところの記事を引用して貼付しておく。

めまい出現前のエピソードを聞き出す
 頸性めまいを疑った場合、どのように診断していけばいいのだろうか。
高橋氏は、「ふらふらするめまいか、ぐるぐるするめまいか」という質問に始まり、脳血管疾患や耳鼻科疾患を除外するために、「頭が痛かったり、重かったりはしませんか。
耳鳴りや耳の調子がおかしい感じはありませんか」と問う一方で、
必ず肩こりの有無を患者に確認する。

人によっては肩こりの重症度の受け止め方が異なるため、「肩こりはない」という患者にも「首や肩が重いようなすっきりしない感じはないかと質問することが有効」と高橋氏はアドバイスする。

 さらにめまいが出現した時期よりも前に、頸部を酷使するようなエピソードがないかを確認することも大切だ。
二木氏は「BPPVと診断して治療しても改善が認められないときに、過去に頸部疾患を指摘されたことがないか聞くことも有効だ」とアドバイスする。
 
福武氏は、問診で主に肩こりの4大危険因子を聞くようにしている。
(1)運動不足かどうか、
(2)パソコン作業などの姿勢の問題を抱えていないか、
(3)ストレスで緊張することが多いかどうか、
(4)首から上(眼や歯)に悪いところはないか、首から下(腰や膝)が悪くないか
――の4つだ。

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# by m_chiro | 2017-01-21 15:48 | 「神経学」覚書 | Trackback | Comments(0)
鷹下肢痛への硬膜外ステロイド注射の有効性についての一研究
腰下肢痛への硬膜外ステロイド注射は、よく見ても短期間の効果しかなく、有効性を示す科学的根拠は見いだせない、とする研究。

腰痛と坐骨神経痛に対する硬膜外ステロイド注射に関するRCT(ランダム化比較試験)の系統的レビューを実施した結果、硬膜外ステロイド注射の有効性を示す科学的根拠は見出せなかった。
もし効果があるとしても短期間しか持続しない。

すでに硬膜外ブロック注射の保険適応を制限し始めている国や地方があります。
医療従事者が自分の腰痛患者に行なう治療に関して、完全な支配権を握っている時代は終焉に向かっています。
いつまでもエビデンスのない治療を続けているわけにはいきません。

Efficacy of epidural steroid injections for low-back pain and sciatica: a systematic review of randomized clinical trials.
腰痛および坐骨神経痛に対する硬膜外ステロイド注射の有効性:無作為化臨床試験の体系的レビュー

この研究の目的は、腰痛に対する硬膜外ステロイド注射の有効性を評価することであった。
公開された無作為化臨床試験のコンピュータ支援検索および試験方法の評価を用いてデータを得た。
硬膜外ステロイド注射を評価する12のランダム化臨床試験が確認された。
硬膜外ステロイド注射の有効性に関する4つのカテゴリー(研究集団、介入、効果測定、およびデータ提示および分析)および著者の結論を使用して、方法の質についてのスコアに基づいてデータを抽出した。

試験の方法スコアは17〜72ポイント(最大100ポイント)の範囲であった。
8回の試験では、メソッド点数が50点以上であった。
4つのベスト・スタディ(> 60ポイント)のうち、2人が肯定的結果を報告し、2人が否定的結果を報告した。
全体的に、6つの研究は、硬膜外ステロイド注射が基準治療よりも有効であり、6が基準治療よりも良くないことを報告した。
試験の方法論的品質と報告された結果との間には関係がないようであった。

結論として、ほとんどの研究の設計に欠陥がある。
最善の研究では、硬膜外ステロイド注射の矛盾した結果が示された。
硬膜外ステロイド注射の有効性はまだ確立されていない。
硬膜外ステロイド注射の利点は、もしあれば短期間しかないようである。
今後の研究努力は正当であるが、治験の方法にもっと注意を払うべきである。


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# by m_chiro | 2017-01-20 10:41 | 痛み考 | Trackback | Comments(0)
「痛み学」NOTE 76.機能性身体症候群(FSS)は慢性痛症を統括するのか
「痛み学・NOTE」は、日々の臨床で痛みと向き合っている医師や日本を代表する研究者の著作あるいはホームページを通して学んだり考えたりしたことを、私の「学習ノート」としてまとめ、書き綴るものです。


「痛み学」NOTE 76. 機能性身体症候群(FSS)は慢性痛症を統括するのか

本来、痛みは生理機能的に誘発されるものである。
ところが、その原因を器質構造に求める時代が長く続いた。
それを反証するかのように筋・筋膜にスポットが当てられ、「筋筋膜疼痛症候群(MPS)」が提示されたのである。1952年、Travellらによるものであった。

筋筋膜痛そのものは、ヒポクラテスの時代にまで遡ることができる古い疾患名でもある。
それでもMPSの概念とは違う。
MPSは筋・筋膜に起因する関連痛などの複合的な関連症状を特徴とする症候群である。
だから筋・筋膜が傷害された病態とは概念的に異なるのだ。

MPSはトリガーポイント(TrP)の存在がひとつの指標になっている。
それは押圧刺激などによって他の部位に関連痛を誘発する特徴があり、少なからず自律神経症状を伴うこともある。
それでも診断の指標となる臨床検査値は見当たらない。
症状も一様ではなく、全身性に発症する。面倒なことに、TrPができる機序も仮説の域を出ていないのである。それに押圧によって痛みを伴うからといって、必ず関連痛が生じるわけでもない。筋・筋膜という視点で考えると、「線維筋痛症(FMS)」と重複する要素もありそうだ。

線維筋痛症は、1990年に米国で診断基準が発表されている。
初期症状を圧痛点に求めていることもMPSと重なるところではあるが、関連痛が指標になっているわけではない。
圧痛点による決定的な違いは、MPSが一側性に出現するのに対して線維筋痛症では両側性に顕れる。
4㎏/㎝2での触診で圧痛点を確認することになるが、全身18ケ所のランドマークのうち11ケ所以上に存在が認められる病態を初期症状としている。

ところが次第に自律神経症状や精神神経症状が顕著になり重症化する。
ドライアイ、ドライマウス、不眠や鬱など、多様な随伴症状から受診科目も広範にわたっている。
ともかく複雑で厄介な病である。
今では下降性疼痛抑制系の障害を重視しているようだが、この病態の詳細については日本線維筋痛症学会が「線維筋痛症診療ガイドライン」を発刊(2013)していてネット検索で読むことができる。

近年また新たな概念が提示された。
それは「機能性身体症候群(Functional Somatic Syndrome;FSS)」とされる疾患である。
世界疼痛学会(IASP)では、2009-2010年のスローガンに「世界運動器痛年」を取り上げた。
その運動器痛のカテゴリーのひとつとして「機能性身体症候群;FSS」を提唱しているのである。
ところが「またもや」である。
FSSは適切な診察や検査を行っても、病理学的所見の存在を明確に説明できない病態とした。
医学的に説明できない身体症状は、今に始まったことではない。
それだけに痛みは複雑であることになるが、FSSは痛み症状だけでなく慢性的な疲労感、動悸やめまい、過敏性腸症候、ムズムズ脚症候、線維筋痛症など、これも症状が重ね合わされて表現されるという。

FSSは、A. J. Barsky教授(ハーバード大学・精神科)が1999年に定義した。
当初は批判的な意見も多く、その拡散には時間を要したのだろう。
‟The Lancet” 誌にレビューが掲載されたのは2007年だった。
批判が多かったのも分からないでもない。
何しろパンドラの箱のように、いろんな疾患や症状が詰め込まれている。
そのような「医学的に説明困難な身体症状(Medically Unexplained Symptoms)」は、以前から「MUS」として一括りにされてきた。
ここにきて「FSS」を新たに一つの疾患概念にしようという狙いなのだろうか。

FSSに含まれる病態には、それぞれの診断基準に類似や合併疾患が認められること、精神症状の随伴が高率で、しかも発症率も女性に多いことなど類似点も多い。
このこともFSSとして一括りにした理由らしい。

医学的診断とは、病因を病理学的に推測・確定することにある。
が、痛みなどの感覚機能の病態を確定的に断定することには困難が伴う。
そもそも生きものは複雑系にあるからだ。
だからこそ、腰痛などの痛みは自己限定疾患とされ、2012年の国際疼痛学会では90~95%の腰痛を非特異的であるとした。

背景には心理・社会的要因があるとする。
要するに訴える症状は氷山の一角であり、底辺には心理・社会、経済など身体機能的に関連する大きな問題が眠っているということだろう。

だからと言って心理的な理由をあげつらい、臨床の現場で患者を説き伏せても、あるいは気休めの言葉を投げかけても、解決に繋がるわけではない。
まして不安を増長させる物言いはノーシーボ効果をもたらす最悪の対応になる。

そうなると「病の物語」に耳を傾け、納得いく説明と理解から治療がはじまるのだろう。
そこから集学的アプローチが望まれるのである。
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# by m_chiro | 2017-01-07 21:43 | 痛み学NOTE | Trackback | Comments(0)
2017・あけましておめでとうございます。
治療室に年明けの正月飾りをしました。

酉年にちなんで、丹頂鶴のつがいの木彫りをメーンにしてみました。

新年も、みなさんの役に立つ治療を心がけてまいります。



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# by m_chiro | 2017-01-01 23:32 | 守屋カイロ・オフィス | Trackback | Comments(0)
「腰痛学校」に学ぼう!
先日、中年の婦人が治療にみえた。左腰下肢痛を訴えている。
1週間ほど前に、階段を踏み外して4段ほど滑り落ちたらしい。
打ち身による内出血で、臀部がどす黒くなっている。
それは打撲だから、内出血が消えるまではもう少し時間がかかるだろう。

それでも心配なことがあるようだ。
彼女は慢性的な腰痛を抱えている。
数年前に整形外科を受診したら、X-rayで「L5すべり症」と診断され、「このままでは車椅子になる!」と言われた。
不安になって彼女は、車で2時間ほどかけて大学病院の整形外科を受診した。
どうせ手術するなら大学病院でやろう、と決心したのだそうだ。
MRIで「脊髄に少し圧迫があるが、手術の適応範囲ではない」と言われた。

それでも年2回は経過観察のためにMRIを撮るために大学病院に出向いている。
今回、階段を滑り落ちたので心配している。
深部反射は正常に反応している。

腰痛の原因は複合的である。
近年では、心理・社会的側面が重視されるようになっている。
腰痛は腰が悪いのだと決め込んでいるが、そういう思いや考えこそが腰痛を治らなくしているのだよ、というわけである。

「そんなことないよ! 実際、腰が痛いんだよ!」と言うかもしれない。
が、腰が悪いという思いが、実は腰に注意を向けさせることで脳が興奮するのだ。
結果的に、脳の興奮を証明するように腰に痛みが出るのだ。

いや、そんなことはない。腰のヘルニアを手術したらよくなった!という人がいるではないか!
そう思うだろうが、結果はそのことの裏返しということもあり得るという話である。

悪いところを取り除いた、と言う思いが脳の興奮を静める。
結果的に、痛みのサイクルが遮断されたのかもしれないではないか。
これをプラシーボ効果ともいうが、プラシーボ効果は少なからずつきまとうのだ。
侮ってはならない。

手術で治癒したというのであれば、それはそれでよい。
手術も一つの手段だろうから。
が、痛みは心理的な要素が多分に関わっているということを忘れてはならない。

逆に「ノーシーボ」による悪化もある。
ここが悪いという思い込みで、痛みが増強されるのである。
だから医師や治療家などは、決して「脅し」を使ってはならない。
「このままでは車椅子になる!」。
この脅しは、彼女の腰痛の原因を「すべり症」に向かわせ、不安を増幅させて腰痛を慢性的なものにしている。
脅しても何も解決しない。。
それよりプラシーボを大いに利用すべきだろう。
プラシーボは、プラシーボ効果と分かっていても効果があることが知られている。
自分が何不自由なく動けていることをリアルにイメージすることが、脳への強力なメッセージにもなるのだ。

慢性腰痛の患者さんであった伊藤かよこさんは、自らの体験を通して痛みを勉強し、鍼灸師の資格も得て、今度は腰痛に悩まされている人たちに強力なメッセージを送っている。
今回、その体験を活かした本を出版した。
「腰痛学校」
必読である。なにより分かりやすい。
小説を読むように、痛みを知ることができる。
多くの人たちに読んでもらいたい本である。
痛みに悩まされている人達は、先ずは痛みを知ることから治療がはじまるのである。
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# by m_chiro | 2016-12-30 09:51 | Books | Trackback | Comments(0)



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